うだうだと文句を言っても仕方ない。
初回は俺とベーシュさんだと、Twittersでも散々告知してしまったのだから。
「俺だけ鼻風邪引いたので、急遽欠席します」も通用しそうにないので。
こうなったら、覚悟を決めるしかない。
「はぁ~…。ちゃんと喋れるかな…」
初回の俺が下手をしたら、次から聞いてくれないよ。
この責任の重大さ。皆さんお分かり頂けるだろうか。
しかし、ベーシュさんは微塵も緊張している様子はなく。
「大丈夫よルトリア。いつも授業で喋ってるみたいに喋れば良いのよ」
あっけらかんとして、そう言った。
…ベーシュさん。なんて軽いノリ。
「授業とは違うじゃないですか…。アシスファルト語教えるんじゃないんですよ…?」
このラジオがさ、「15分で教える!ルトリア先生のアシスファルト語講座」だったら、こんなに緊張せずに済んだだろうけど。
そうじゃないんだよ?
「同じようなものだよ。アシスファルト語を教えるときだって、最初は緊張したでしょ?」
「それは…まぁ」
どう教えて良いのか分からなくて…相当緊張してたけどさ。
「でも今では、すらすら教えられるようになってるんだから。これも同じ。きっとすぐに慣れるよ」
「…」
「基本的にルトリアは、喋るの上手だから。そんなに心配しなくて良いよ」
…ベーシュさん。それ。
…褒めてくれてるんですか?
素直に…喜んで良いものだろうか。
俺が喋るの上手って…それは授業に限った話であって…。
しかも、授業でもそんなに上手に教えられているとは…。
それに、生徒に教えるのと、リスナーにお話しするのは、また違う話なのでは?
と思ったけど、何と言い返してもベーシュさんはあっけらかんとしていそうだし。
…何も言えず。
それどころか、ベーシュさんは。
「…それとも、そんなに緊張してるなら、また物理的に緊張ほぐす?」
拳を固めながらそんなことを言い出すものだから、俺は慌てて拒否した。
「だ、だ、大丈夫です。心配要らないので。平気です」
「そう。なら良かった」
って言うか、この間のあの腹隕石、やっぱりベーシュさんだったんですか?
あの後、結構な痣になってたよ。
あれで力半分って…。もし百パーセントだったら、どんなことになっていたのか。
そう考えると、恐ろしくて震えがした。


