Music of Frontier

この『frontier』ラジオ企画は、ライブやCDほどの大変な準備をせずとも、すぐに始められるとして。

単独ライブと、アルバムの宣伝も含め、早いうちに始めておいた方が良いという配慮もあり。

俺達が承諾した、その二週間後には、ラジオ企画が始まった。

それは良いのだけど、俺が解せないのは一つ。





「…何で初回の担当が、俺とベーシュさんなんですか」

解せない。

解せないよこんなの。

…解せぬ!

「順当な結果だと思いますよ。『frontier』の人気No.1とNo.2ですからね」

ユーリアナさんはにこやかに笑った。

この人、今日酔っぱらってるのかな。

そうでなきゃ血迷ってるとしか思えない。

何で、初回から俺?

『R&B』も強気が過ぎるんじゃないか。一番始めの重要な「掴み」の回に、俺を持ってくるなんて。

ベーシュさんは良いよ。ベーシュさんを持ってくるのは間違いないと思う。

美人だしね。可愛いし。

全国にはベーシュさんファンが大勢いることだろう。

夜中とはいえ、ベーシュさんの生声が聞けるなら、ホイホイとパソコンの前に座る人は少なくないだろう。

でも、その相方が俺だよ?

何で?

嫌がらせじゃないか。

「何でルトリアなんだぁぁぁ!」って絶対思われてるよ。

俺へのアンチが加速するから、やめてくれないかな。

俺帰った方が良いのでは?

「俺はやめた方が良いですよ…。ここはベーシュさんとミヤノに任せるべきでしょ」

大体俺は、そうなると思ってたのだ。

『frontier』の美男美女であるこの二人が初回を飾れば、きっとリスナーも増えるはず。

だから、それが順当だと思っていた。

それなのに、何故俺にお鉢が回ってくるのか。

おかしいだろう。あまりにも。

しかし、ユーリアナさんは意に返さない。

「大丈夫ですって。自信持ってください。はい、これ台本なので。必ずしもこの通りに進める必要はありませんが、目を通しておいてくださいね」

「…」

…やっぱり、あなた今日酔っぱらってるな?

もうそうとしか思えないよ。