Music of Frontier

腹部に疼くような痛みはあったものの。

お陰で物理的に緊張がほぐれ、意外にすっきりした気分で歌えた。

腹に落ちた隕石、ありがとう。




「ぶぉ~…」

「…ルトリア。お前、それ何処から声出してるんだ?」

ボーカルにあるまじき声が出てるよね。

でも、そんな声も出てしまうんだよ。

15曲を歌いきり、何度か録り直しもして。

無事にOKが出たので、とりあえずこれで良いですか?と確認の為に、先程録ったばかりの歌を視聴させてもらった。

…の、だが。

自分の声ってさぁ、録音すると何でこんなに気持ち悪いの?

CD出すのやっぱりやめない!?って言いたくなってくる。

凄く下手くそな気がするんだけど、大丈夫?

「これ…売れるんですかね…?」

「そんな心配そうに聞くなよ…。いつも動画を観てくれてる人は、きっと買ってくれるよ」

そうだと良いのだけど…。

このCD、1500円プラス税、で販売されるそうなのだが。

これに1500円、出してくれる人いるかなぁ?

15円だったらいると思うけど。

しかも、問題はレコーディングだけではない。

「CDのジャケットですけど、ファーストアルバムなのでスタンダードに、ルトリアさんを中心にお写真を撮らせてもらおうと思ってるんですが、良いですよね?」

などと、とんでもないことをさらっと聞いてくる、ユーリアナさん。

ちょっと待て。うっかり「良いですよ」と言いたくなってくるじゃないか。

良い訳がない。

「何で俺がセンターなんですかっ!?」

「え?ルトリアさん、ボーカルですから」

あっ、成程。

でも違う。そうじゃない。

そうじゃないんだよ。

「俺は写さなくて良いですよ。あの…指一本くらい写してくれたら、それで良いんで」

「指一本って、お前…。ボーカルが指一本って。それなら写さない方がまだましだろ」

だって。恥ずかしいんだもん。

顔は写して欲しくないけど、指一本くらいは写りたい。

「ベーシュさんとミヤノをどアップにしましょうよ。ジャケットだけで売れますよきっと」

「それじゃ『frontier』のアルバムにならないだろうが。良いから、センターで写れルトリア。ちゃんと笑えよ。お前だけひきつった顔になるぞ」

「えぇ~!」

俺が、散々反対したにも関わらず。

結局俺がセンターで写される羽目になり、もう今からアルバムの完成が怖くて堪らなかった。

売れなくても、知らないんだからね。