Music of Frontier

更に、もう一つ、やらなけれらばならない準備がある。

それが、ライブ当日に発売する、『frontier』のファーストアルバム。

タイトルはずばり、『frontier first album~symphony~』。

格好良いな~とは思うけど、タイトルが格好良いだけで、聴いてみたらイマイチ、なんてことにならないように頑張らなくては。

アルバムに収録される歌をレコーディングする日、俺はいつも以上に緊張しながら、ユーリアナさんが指定したスタジオに向かった。






「ひっ…ひっ…ふー…。ひっ…ひっ…ふー…」

「…」

「ひっ…ひっ…ふー…」

「…ルトリア。緊張するのは分かるが、ラマーズ法で緊張を紛らせるのはやめろ」

ルクシーが、俺の肩にぽん、と手を置いた。

それにすら、うひゃっ、と声をあげてしまいそうになるほどには。

俺は、緊張していた。

そりゃ緊張もするだろう。

「俺の声が…!今日ここで録った俺の声が、永遠に残ることになるんですよ!緊張せずして何をしろと言うんですか!」

普通のライブだったら、いくら音を外そうと歌詞を間違えようと、その場の一瞬の恥で済む。

でもCDになったら、一生、聴く度に恥ずかしい思いをすることになるんだよ?

「それを言うなら、ルトリア。yourtubeにアップしてる動画はどうなるんだ。あれだって一生残るぞ?」

「yourtubeは…なんかちょっと間違えても、明るいノリで草生やすだけで許してくれそうな雰囲気がありますけど!CDにはないでしょ!」

yourtube=何でも許してくれる。

CD=甘えは許してくれない。

こんな感じ。分かる?

「本格的に緊張してるな。ちょっと落ち着けルトリア。大丈夫だ。いつも通り歌えば良いだけだ」

「そういうこと言われると、余計に外しそうになるんですよ~!」

「外しても良いよ。何回か録り直すって言ってただろ」

でもでも。何回録っても全部何処かを外す可能性がある。

「せめて、yourtubeにアップしてるぶんは、動画の音源をそのまま使ってくれたら良いのに…」

今回のアルバムは、yourtubeにアップしている動画の中で、特に再生数の多い10曲と。

アルバムの為に書き下ろした5曲を収録することになる。

だから、yourtubeにアップしている動画の音源を、そのままCDに使ってくれたら良いのに…と俺は思っていたのだが。

今までにアップしていた動画は、全部俺達素人が録ったもので、CDにするには雑ということで。

しかも、yourtubeにアップしているものをそのまま使ったんじゃ、「じゃあCD買わなくても、yourtube見れば良いじゃん」となるファンが増えることを懸念し。

「アルバムの為に、全曲録り直し!」のテロップを入れる為、15曲全部を歌わなくてはならない。

結構キツいよ。

一曲につき一回録るだけで済めば良いが、俺が外したり、メンバーの誰かがミスをした場合、また録り直しだ。

少しくらいなら、編集で綺麗なところを寄せ集めて継ぎ接ぎしても良いけど。

あんまり継ぎ接ぎだらけの歌じゃ、俺達も納得出来ない。

要するに、ミスるにミスれない、ということだ。