Music of Frontier

そんなことをしていたら、授業の時間が短くなってきた。

「もー…。授業始めますよ」

すっかり遅くなっちゃったじゃないか。どうするの。

今日、テキスト10ページ分やっちゃおうと思ってたのさ。

気を取り直して、授業を始めようとテキストを手に取り、黒いペンでホワイトボードに例文を書こうとした。

それなのに、生徒達の追及は止まらない。

「ルトリア先生は、ベーシュ先生と付き合ってるんですか?」

「ぶはっ!」

あまりの衝撃的な質問に、俺はペンを落としてしまった。

「あっ、やっぱり!」

「何がやっぱりですか!付き合ってないですよ!」

なんてことを聞くんだ。君達は。

前々から、下世話にも程があると思ってたが、ここまでとは。

「でも、同じバンドにいるんですよね?しかも職場まで一緒と来たら。ねぇ?」

何がねぇ?なの?

「もしかして、一緒に住んでたり?」

「同棲ですか?良いなぁ~!」

「美男美女カップルだ!羨ましい!」

おい。待てちょっと待て待て待て。

勝手に話を進めるのやめなさい。

「違いますよ!付き合ってないです!同棲もしてません!ベーシュさ…ベーシュ先生に失礼でしょうが!」

「え~…。付き合ってないんですか?」

何で残念そうなの?

ちょっとね、君達。さすがに怒るよ?

怒るの向いてないらしいけどね、俺。

「付き合ってません。大きなお世話ですよ!」

「じゃあルトリア先生は誰と付き合ってるんですか?」

「誰とも付き合ってませんよ。どうも済みませんね!」

君達の下衆な期待に応えられなくて、どうも済みませんでしたね。

放っといてくれる?

「良いから!授業!授業始めますよ!これから授業以外のこと喋った生徒は、素行不良と認定して、アシスファルト語の内申点Eにしますから」

「ひどーい!」

「職権濫用だ!」

「ふーんだ!何とでも言え!さぁテキスト開いて!昨日の復習から始めますよ!」

我ながら大人げないと思うが、彼女達を黙らせるには、こうするしかなかった。