Music of Frontier

しかし、ユーリアナさんは。

苦笑しながら、俺を宥めにかかった。

「心配しないでください、ルトリアさん。我々もそこはちゃんと考えてます。利益の見込めないバンドと契約を交わしたりしませんよ。あなた方がライブを行えば、それなりの収益を得られると見込んでいるからこそ、こんなお話をしてるんです。赤字になると分かっていて、こんな提案はしませんよ」

「それは…」

『R&B』はその手のプロなのだから、俺達より余程分かっているだろうが。

でも、それにしたって楽観視が過ぎないか?

「『frontier』のチャンネル登録者数、Twittersのフォロワー数から見ても…。少なくとも500人は見込んでいます。心配せず、どっしり構えておいてください」

「…」

…とてもじゃないが、どっしり構えてなんていられない。

俺の歌を3500円出してまで聴きたいなんて、そんな物好きがこの時空に500人もいるかな。

…そりゃ、いたら良いなぁとは思うけどさ…。

「それから、単独ライブに加えて…もう一つ、お話が来ています」

「…今度は何ですか?」

正直、もう単独ライブだけでお腹一杯なので。

もう重いのはやめてね。駅前でティッシュ配りのお仕事です、とかそういう軽いのにして。

喜んで配るよ。俺。

しかし、現実はそんなに甘くない。

「ライブに合わせて、ファーストアルバムの製作を考えています」

…あっ。

…来ちゃった。

アルバムって言うと…CDだよね?CD録るんだよね?

「大体、全15曲くらいで…。内10曲はyourtubeに出してる動画の中で、再生数の多いもの。残りの5曲はアルバム限定の書き下ろし曲を予定しています。それで大丈夫ですか?」

「あぁ、問題ない」

ミヤノやルクシーは、大層冷静に話をしているけれども。

残念ながら、この辺が俺の耐久限界。

俺には、雲の上のお話にしか聞こえなくなってきたので。

心を無にして、聞いてる振りだけしておこう。

「…」

幸い、ルクシーはそんな俺を見て色々察したようで。

…はぁ、と小さく溜め息をついていた。