Music of Frontier

今まで俺達が参加してきたライブはいつも、『frontier』の他にも、いくつものバンドが参加していた。

複数のバンドとの、合同ライブだった。

よって、聴きに来る観客は、それぞれお目当てのバンドがあった。

でも、今度は違う。

今度は『frontier』の単独ライブ。

聴きに来る観客は、皆『frontier』を目当てにやって来ることになる。

これまでの合同ライブだったら、俺達に興味のない観客でも、「目当てのバンドが出演するまでの暇潰しに、ついでにこいつらのも聴いてやるか…」と、俺達の歌を聴いてくれたけれども。

単独ライブだと話は違う。他のバンドなんて出ない。最初から最後まで、観客は『frontier』の演奏を聴くのだ。

区民ホールの最大収容人数はおよそ千人。つまり、座席は千個ある訳だが。

その座席が、どれだけ埋まるのか。

『frontier』の単独ライブを、聴きに来る人間が何人いるのか。

恐ろしくて、俺には考えることも出来ない。

それなのに、ユーリアナさんは全く危機感がなく、むしろきょとんとした表情のままである。

「大丈夫って…どういう意味での大丈夫ですか?」

「いや…『frontier』の単独ライブなんて、聴きに来る人いるんですか…?」

幕が上がったら、広過ぎる会場にポツンポツン、と二、三人聴きに来てるだけ。

そんなことになったら、俺は泣きながら歌うぞ。

そんな惨めを晒すくらいなら、単独ライブなんてやらない方が良い。

しかし。

「大丈夫。たくさん来てくれますよ」

ユーリアナさんは、この楽観的発言。

何処から出てくるんだって。その自信は。

あ、それとも。

分かった。入場無料なんだな?さては。

それだったら来てくれる人も多いかも。暇潰しに。

成程と納得していると、ミヤノが、

「ちなみに、チケット代はいくらくらいになるんだ?俺達もいくらか持つ必要があるんだろう?」

と、尋ねた。

…ふぇ?

「チケット代は今のところ、3500円程度を考えています。でも、うちでは出演者にチケットノルマは課しませんから。個人的に家族や友人に販売したいなら、それは構いませんが…ノルマはありません」

「そうなのか。それは有り難い」

…あれ?

今、チケット代…3500円って言った?

何それ?何のチケット?

入場無料なんじゃないの?え?ドリンク券?

「?…??」

「…」

首を傾げまくっている俺を、ルクシーがジトッと見つめ。

はぁ、と溜め息をついた。