Music of Frontier

何て言うか…目が点になりそう。

「何じゃそりゃ…マジかよ。元ファンがマネージャーやるってこと?」

俺と同じく、目が点のエルーシア。

「そもそもファンだったのか?始めからスカウト目的でライブに来てたんじゃ…」

と、言ったのはルクシーであった。

え。そういうことなの?

『frontier』の歌が好きだったんじゃなく、あくまでビジネス目的で、「こいつらなら売れるだろう」と思ったから近寄ってきたと?

もしそうなら…三日は立ち直れないくらい落ち込むが。

ユーリアナさんは、それだけはきっぱりと否定した。

「それは違います。最初にライブハウスで『frontier』のライブを観たときは、まだ『R&B』には入社してませんでしたし…」

「そうなんですか…?」

「はい。今は『R&B』の社員ではありますが、同時に『frontier』の大ファンでもあります。その気持ちは、今も変わりません」

嬉しい言葉…ではあるけれど。

でも。

「…でも、他にも社員さんはいるんでしょう?その中でわざわざあなたが俺達のマネージャーに選ばれたってことは…」

「…はい。『R&B』に入社してからは、なんとしても『frontier』をうちに所属させたくて、上司や同僚にプレゼンしたりして…。ちょっと身贔屓が入ってたかもしれません」

ユーリアナさんは、照れ隠しに笑った。

「でも、このグループなら、『frontier』なら後々ルティス帝国音楽界に名を轟かすアーティストになれるだろうって、皆太鼓判を押してくれました」

それは、ちょっと買い被り過ぎでは?

一体何処から出てきたんだ。その自信は。

「あなた方を『R&B』に売り込んだのは私なので、私がマネージャーを任されました。個人的にも…『frontier』の皆さんとお仕事が出来るのは、大変光栄です。至らないところも多いと思いますが、これから、どうぞ宜しくお願いします」

「あ…ありがとうございます。こちらこそ」

どぎまぎしながら、俺はユーリアナさんが差し出した手を握り返した。

…まさかの、ファンの一人だと思っていた女性が、ビジネスパートナーになるとは。

人生って、本当に分からないものだなぁと思った。