Music of Frontier

「あなた…『華吹雪』さん…ですよね!?」

俺の記憶に、間違いがなければ。

俺達の動画に、初めてコメントをくれた。

「声が綺麗ですね」という、俺の中で論争を巻き起こした褒め言葉を送ってくれた。

そして、ライブには必ず来てくれた。

ミヤノの親戚さんが経営してるライブハウスでのライブの後、出待ちしててくれた。

あの『華吹雪』さんが、そこに立っていた。

「はい。覚えいてくれて嬉しいです。ルトリアさん」

彼女は心底嬉しそうに微笑んだ。

…『華吹雪』さん、一体何故ここに。

「えっと、あの…何で、ここに…」

姿を見かけたから追っ掛けてきました、とかじゃないよね?

俺なんか追跡する価値ないよ。俺を追跡する暇があったら、道端のアリンコを追跡した方が余程有意義に時間を使える。

しかし、『華吹雪』さんは俺を追跡する為に、ここに来た訳ではなかった。

「あ、名乗るのが遅れましたね…。私、この度『frontier』さんとの所属契約を担当します、『華吹雪』こと、ユーリアナ・ルティニーと言います。宜しくお願いします」

『華吹雪』さん、改め。

ユーリアナさんは、『R&B』の社名が入った名札と。

同じく社名の入った名刺を、俺達の前に見せてくれた。

…書いてる。

『R&B』ユーリアナ・ルティニーって書いてある。

ってことは…『華吹雪』さんって…。

「…『R&B』の社員さんだったんですか?」

「はい。まだまだ新米ですけど」

「そんな…」

…そうだったんだ。

そうだったんですね。