Music of Frontier

「ふぁ~…。なんだかドキドキしますね…」

「また緊張してるのか?ルトリアは…」

そんな呆れた顔をして見ないで。

そりゃ緊張もするでしょうよ。

今日は、『R&B』の担当者と初めて会うんだよ?

物凄く強面の屈強な担当者が来たらどうしよう。

俺なんて、ぺしゃんこにやられるよ。

「ボーカルは顔面がアレだから、ボーカルだけ他の人に替えましょうとか言われたら、どうしよう…」

実は、それがちょっと不安だったりする。

言われかねないよ。これからの『frontier』のことを考えて、あなたは身を引いてもらう方向で…とか。

しかし、ルクシーは呆れながらこう言った。

「そんなこと言われたら、事務所所属の件は断るよ。別のボーカルが入ったんじゃ、それは『frontier』じゃないからな」

「え…そうなんですか?」

「このメンバーで出来ないなら、事務所に入る意味なんてないだろ」

…そうなの?

そうだよね。下手くそでも顔面がアレでも、俺がいても良いよね。

良いって言ってくれないと困る。

「とにかく、どっしり構えてろ。ファーストコンタクトは大事だぞ」

「俺…人見知りなんで…」

そして小心者なので。

俺のハートはネズミのハート。

しかし、実際のところ、初日で意見が食い違ったらどうすれば良いんだろう…。

などと考えていると。

「『frontier』の皆さんですよね。こんにちは」

「ふぁっ!はい!」

ファーストコンタクトは大事、と言われたばかりなのに。

思いっきり、ふぁっ!とか言ってしまったが。

しゅばっ、と顔を上げると、そこにいたのは。

「え…!」

「お久し振りです。ルトリアさん」

見覚えのある人物だった。