Music of Frontier

「…ふぉー…。マジかー…」

エルーシアもびっくり。

いざ決まってみると、ふぉーと言いたくなる気持ちも分かる。

俺も今、ふぁぁ~って言いたいもん。

「それとな、エル。『R&B』が詐欺じゃないかって心配してたけど…。それは、多分心配ない」

と、ミヤノ。

「どゆこと?」

「今朝、また別の音楽事務所…と言うか、yourtuber事務所からもスカウトのメールが来たんだ」

…何だって?

衝撃の新事実。スカウト二回目。

「おまっ…それ先に言えよ!」

「ごめん。先に言ったら反対意見が口にしづらくなるかと思って…。皆賛成だったから、言っても良かったな」

なんてことだよ。

他の事務所からもスカウトって、それじゃ本当に…。

「だから、『R&B』が詐欺目的で俺達に声をかけた線は薄いと思う。他の事務所からも連絡が来るんだから」

その…今朝メールをくれた事務所もまた、詐欺目的である可能性はあるが…。

まぁ、そんな偶然はほぼないだろう。

つまり、本当に俺達の実力を買ってくれているのだ。

一周回って、怖くなってくるな。

「それで…事務所に所属するなら、『R&B』と、今朝スカウトしてくれたyourtuber事務所と、どちらかを選ばないといけない訳だが…皆、どっちが良い?」

どっちの事務所に所属する?なんて。

なんという、贅沢な選択肢であることだ。

あまりにも畏れ多い。

でも、どちらかを受ければ、どちらかは断らなければならないんだよな。

バチ当たるんじゃないかな。

「今朝スカウトしてきた方は、音楽事務所と言うより、yourtuber事務所なんだよな?」

「そうだな。だからこっちを選ぶと、これからの活動はyourtubeを中心にすることになると思う」

ふむふむ。

「で、『R&B』の方を選ぶと…yourtubeに加えて、yourtube以外の活動も盛んになると思う」

『R&B』は、yourtubeの方にも手を伸ばしてるし、リアルの音楽活動にも力を入れてるんだよね。確か。

つまり、『R&B』の方が、活動の範囲が広い訳だ。

となると…。

「俺としては…音楽活動を広くやりたいから、『R&B』の方が良いと思うんだが…」

と、意見を述べるミヤノ。

「俺も同感だな。俺達は音楽活動をしたいのであって、yourtuberになりたい訳じゃないし」

ルクシーも同感だと。

「だな。今後のことを考えると、『R&B』の方が良さそう」

「私もそう思う」

エルーシアとベーシュさんも、それぞれ『R&B』を選んだ。

「ルトリアは、どうだ?」

贅沢な悩みではあるが。

皆が、選んだことなのなら。

俺の心も決まっている。

「俺もそれが良いと思います。最初に声をかけてくれたのは『R&B』ですし…。そこにしましょう」

「よし。じゃあ、そう返事をするよ。誰か、反論のある者は?」

誰もいない。全員が賛成だった。

こうして、話し合いは円満に終わった。