Music of Frontier

「どうやら、思い当たることがあるようだな」

唖然としている俺に、教官が勝ち誇ったように言った。

ついに尻尾を出したな、と言わんばかり。

確かに思い当たることはあるけど…。え、でも。

あれだけでカンニングを疑われるって…。

「それに試験当日、一夜漬けに失敗して背水の陣だったそうじゃないか。それでカンニングペーパーを持ち込んで…」

「それは…確かに切羽詰まってはいましたけど…」

でも、だからって誰がカンニングなんて。

俺だって、やって良いことと悪いことの区別くらいはつく。

本格的に、間違いを正さないといけない。

何か妙なことが変な風に伝わって、俺に限りなく不利な状況になってる。

「…教官殿。確かに自分は、定期試験の度に自分でノートをまとめ、要点表を…ともすればカンニングペーパーのようなものを…毎回作ってはいます。それは事実です」

カンニングペーパーと言うのも腹立たしいが、一応便宜上カンニングペーパーと言っておこう。

カンニングペーパーじゃないけどな。

「でも、断じて不正行為はしていません。試験に要点表を持ち込んではいませんし、試験中に見てもいません。全部自分の実力です」

「…」

「誰からのタレ込みかは存じませんが、非常に悪意のある誤情報です。自分は無実です」

一体誰だ。俺に冤罪着せようとしているのは。

とんでもない糞野郎だ。

俺は俺が無罪だと知っている。俺はカンニングなんてしてない。

しかし、教官殿はそれを信用しなかった。

自分が無実であるという証拠も何もなく、ただ「自分は悪いことなんてしてない」とだけ繰り返す容疑者を信じろなんて、無理な話だ。

「…貴殿は毎回、試験ではトップの成績だ。それも全て、カンニングによるものなのだとしたら…」

「だから!不正行為はしていないと…!」

「それは我々が判断することだ。貴殿が決めることではない」

「…っ…」

横暴にも程がある。

けれど、それがまかり通ってしまうのだ。

何故ならここは、帝国騎士官学校なのだから。

教官に絶対的な権力がある、帝国騎士官学校なのだから。

教官が「ルトリアはカンニングをした」と言えば、真偽はどうあれ、それは事実になる。

「貴殿の処遇については、追って沙汰を出す。それまでは自室謹慎を命じる」

「!待ってください。俺は…!」

無実の罪で謹慎なんて、理不尽極まりない。

そう思って抗弁しようとしたが。

「これ以上話すことはない。退室しろ」

「…!」

俺は固く拳を握り締め、唇を噛んで、言葉を呑み込んだ。

…これ以上、何か言っても仕方ない。

教官達は俺がカンニングしたと信じきっているのだから…俺が何を言っても信じてはもらえない。

「…失礼しました」

俺は慇懃にそう言って、教官室を後にした。

腸が煮え繰り返る、とはこういうときのことを言うのだ。