Music of Frontier

「ねぇルクシー…」

「うん?」

「ルクシーはどう思います?その…昨日のこと」

「…そうだな…」

昨日のこと、が何を指すのかは当然分かっている。

『frontier』の未来について、だ。

「その話をここでするのは、ルール違反じゃないのか?皆各々、自分で考えてるんだろうし」

「それはそうですけど…。でも、良いじゃないですか。…独り言だと思えば」

「そうか…。独り言か。なら仕方ないな」

独り言が偶然、聞こえてしまっただけだよ。

そういうことにしておこう。

「…俺は賛成だ。ずっと夢だったからな。自分達のバンドが世間に認められて、大きなライブをしたり、CDを出したり…。バンドをやってる人間なら、誰でも純粋に憧れるものだろう?」

「…」

俺は答えなかった。

これはあくまで独り言なんだから、俺が返事をしちゃいけない。

「まぁ…でも、誰かが反対するなら、やめた方が良いと思う。俺が一番嫌なのは、売れないことでも、事務所に入れないことでもない。意見の食い違いでメンバーの間に亀裂が入ることだ」

…確かに。

それは、俺も同意見だ。

「俺は今の『frontier』が楽しい。皆が事務所の所属に賛成して、足並み揃えて皆で踏み出すと言うのなら、俺も賛成する。でもそうじゃないなら、現状維持で良い。分裂することだけは避けたい」

「…」

それが、ルクシーの意見か。

つまり…基本的には賛成、ってことだな。

でも誰か一人でも反対がいるのなら、ルクシーも反対派になると。

とにかく大事なのは、皆で一緒にいること。

今の皆で『frontier』をやることなんだ。

俺もその気持ちは同じだ。内部分裂するくらいなら、こんな話は断った方が良い。

でも…難しいよな。誰かは反対するけど、他の誰かは賛成を主張したら。

どうやっても…分裂は避けられない。

それは…嫌だな。俺は。

「…ルトリアは?もう意見は出てるんだろう?」

「…はい」

ルクシーが独り言を言ってくれたから、次は俺の番。

俺の心は既に決まっているのだ。昨日、ミヤノからこの話を聞いた時点で。

「…俺は賛成です」

前に進めるのであれば。

是非とも、前に進みたい。

アーティストなら誰でもそうだろう。もっと自分のことを知って欲しい。自分の創り出すものに触れ、感動してもらいたい。

俺だってそう。下手くそボーカルの端くれではあるけれど、それでも歌うことは楽しいし、皆で奏でた音楽を、もっと多くの人に聴いて欲しい。

この喜びを、楽しみを、他の人にも共有して欲しい。

音楽事務所に所属して、それが叶うのなら…純粋に、素直に、そうしたいと思う。

でも、それが叶うのなら『今の皆で』じゃないと駄目だ。

今の『frontier』のまま、皆で一緒に歩き出したい。

そこはルクシーと同じ気持ちだ。もし意見が対立するのなら、無理に賛成意見を押し付けるつもりはない。

多くの人に歌を聴いてもらいたい気持ち以上に、俺は皆と一緒にいたい気持ちの方が強い。

それが、俺の意見だ。