Music of Frontier

さすがに今日の皆は、神妙な雰囲気だった。

ベーシュさんだけは、相変わらず何事もないような顔をしていたけども。

諸手を上げて喜んでいない辺り、皆慎重派だな。

と言うか、単に驚き過ぎて言葉が出ないだけかもしれない。

「…ルトリーヌ。お前、何でリモコン持ってきてんの?」

エルーシアが、俺の右手を見て首を傾げた。

そのときになって俺は、初めて自分がエアコンのリモコンを持ってきていることに気がついた。

…え?何でこんなもの持ってるの?

それだけテンパってたんだろうが。

とりあえず、今はリモコンのことなんてどうでも良い。

「…あの、ミヤノ…。本当なんですか?」

その…さっきの話は。

「あぁ…。TwittersにDMが来たんだ。うちに所属しませんかって」

ミヤノが、スマホの画面を見せてくれた。

うわー…。本当だ。

ここ、現実だよね?俺うっかり夢見たりしてないよね?

「そりゃ嬉しいけどさ。うっかり食い付きたくなるけど…」

「…それ、詐欺とかじゃないの?大丈夫?」

エルーシアとベーシュさんが言った。

その可能性はある。

右も左も分からない俺達に、契約料的なものを騙し取ろうとしているのかも。

もしそうだったら、みすみす引っ掛かる訳にはいかない。

罠に引っ掛かる趣味はないぞ。俺には。

「俺もそう思って、調べてみたんだが…。メールに記載されている事務所自体は存在してるみたいだ。他にも所属してるタレントがいるらしい」

「何て名前の事務所?」

「『R&B』だって。聞いたことあるか?」

俺はその方面に詳しくないから、全国知らないのだが…。

「私は聞いたことある。割と新しい音楽事務所だよね」

と、ベーシュさん。

ベーシュさんが知ってるなら、そんなに怪しい事務所ではなさそうだ。

「ネットでも調べてみたが、悪い噂はなさそうだ。むしろ、今急成長してる事務所だって」

「へぇ…」

ミヤノが、自分で調べてくれたらしい『R&B』の情報を印刷して持ってきており、それを見せてくれた。

更に、メールにも事務所のホームページが記載されていた。

…成程…。

「…どうする?この話、受けるか?」

「…」

にわかにはイエス、と言えなかった。

こういう判断は、うっかり飛び付きたくなるが、慎重に考えなくては。

間違いなく、俺達『frontier』の大きな分岐点だ。

ここで道を間違えば、俺達は路頭に迷うことになる。

「一応…返事は急がないからゆっくり考えてくれ、とは言ってるが…」

「…断るにしても受けるにしても、あんまり長く待たせる訳にもいきませんよね」

「そうだな」

出来ることなら…今のうちに、全員の方針くらいは固めておきたいところだ。