Music of Frontier

「どうだ?ルトリア。初めての独り暮らしは」

「割と充実してますよ」

職場からも近いし。

今のところ、ご近所トラブル的なものもない。

お化けも出てこないしね。

「そうか…。何か大変なことはないか?」

「ないですよ…。心配性ですねルクシーは」

子供じゃないんだから。自分のことくらい自分でするよ。

それなのにルクシーは、俺のことを小さな幼稚園児だと思っているらしい。

何で?そんなに頼りないの?

「ちゃんと食べてるんだろうな?なんかまた痩せてる気がするぞ」

ジトッ、と睨み付けるルクシー。

「食べてますって…」

「何を?」

何をって。

「ベーシュさんからもらった缶詰」

「…それはおかずだろ?主食は?」

「…ベーシュさんからもらった缶詰」

「…」

ルクシーの、目が。

違犯者を見つけた警官の目になった。

「…主食と言ったら、炭水化物だろ。パンとか米とか。炭水化物食べてるのか」

「…食べてますよ。ミヤノからレンジでパスタ茹でるキッチングッズもらいましたし」

「成程。じゃあ缶詰とパスタか。お前いつからパスタ好きになった?」

俺はもとからパスタ好きだよ?

「ちなみに、何パスタ?」

「え…。素パスタ…」

「…素?」

「だから、茹でて塩かけて食べてます」

「…お前、そんなに節約しなきゃいけないほど困窮してたのか」

え?別に節約のつもりで素パスタ食べてる訳じゃないんだけど。

具、入れるの面倒だろう。

「節約じゃないですよ」

「じゃあ何で?入れろよ。ニンニクとかキャベツとか」

「別に何も入れなくても、美味しく食べられるじゃないですか」

「…」

ルクシーは、大きな溜め息をついた。

何?その大きな溜め息。

別に良いじゃないか、素パスタ。缶詰。

凄く立派な食事だと思ってたのに。

「お前…やっぱりうちに連れ戻そうかな」

「え。何でですかっ?」

俺、連れ戻されるような悪いことした?

素パスタだけで?それは素パスタへの冒涜では?

「放っとくとまともなもの食べないだろうと思ってたら、案の定だったな」

「素パスタはまともですよ」

「うるせぇ。お前、何食べてても良いけどな。体重が5キロ以上減ったら、強制的に連れ戻して、無理矢理口に食べ物詰め込むからな」

乱暴。

その日以来、ルクシーはうちに来るときは、必ず段ボール箱一杯の食料を持ってくるようになった。

あと、初心者用の簡単な料理本を何冊か。

残念だが、料理を極めるつもりはないので、今のところやっぱり素パスタで生きている。