Music of Frontier

そんな訳で引っ越してきた、新しい我が家。

新築ではないが、まだ比較的新しめで、内装も綺麗だし。

俺の希望の1LDK。

家具や家電に関しては、自分で新品を買ったり、新品でなくても良いものは中古で買ったり。

あとは、『frontier』の皆から家電を譲り受けたりした。

初めてメンバーに、引っ越すんですよ~と話したとき。

ベーシュさんが、こう申し出た。

「じゃあ私の洗濯機あげる。新しいのに買い換えたいから」

「…え」

ベーシュさん、洗濯機くれるの?ありがとう。

え、いや、でも。

大変有り難い申し出だが…さすがに女性が使っていた洗濯機をもらい受けるのは、倫理的な問題がある気がした。

ベーシュさんは全く気にしていなかったが。

でも、俺は気にする。

「…申し訳ないんですが、 女性から洗濯機をもらう訳には…」

しかし、ベーシュさんは俺が断っている理由が分からなかったらしく。

「新品じゃなきゃ嫌なの?」

と言って、首を傾げていた。

違うんです。そうじゃないんです。

だってあなた、その洗濯機で下着とかバスタオルとか洗ってたんでしょう?それを俺がもらうのは…。

しどろもどろになっていると、俺が狼狽えている理由を察したらしいミヤノが、助け船を出してくれた。

「俺が譲る約束してるんだよ、ベーシュ。俺もそろそろ買い換えようと思っててな」

え。

当然だが、そんな約束はしていない。

引っ越すことを話したのは、今日が初めてなのだから。

「ミヤノ、そんな約束は…」

してないですよ、と言おうとしたのだが。

ミヤノはそっと目配せして、俺を制止した。

良いから、話を合わせてくれ、と。

「そう…。じゃ、電子レンジあげるよ。今目をつけてる最新型があるから。今使ってるのはルトリアにあげる」

ベーシュさんが、またもやそう申し出てくれた。

「ありがとうございます」

電子レンジなら大丈夫だ。ありがとう。

大変助かります。

「エルは譲ってやれるものがないな~…。ごみんな、ルトリーヌ。お詫びに引っ越し手伝いに行くよ」

エルーシアは、申し訳なさそうにそう言った。

そんなこと。

「そんな、別に物を譲って欲しくて言った訳じゃありませんから。気持ちだけで充ですよ。荷物を運ぶ作業は業者に頼むつもりですし」

「えー。でも業者ってぼったくりじゃね?」

「独り暮らしだろ?一人ぶんの家具家電くらい、俺達で運ぶよ」

エルーシアとミヤノがそう言った。

「あぁ。俺も行くつもりだからな。エルとミヤノが来てくれると助かる」

ルクシーまで。

そして、ベーシュさんも、

「私も行くよ。こう見えて、腕っぷしにはちょっと自信があるから。荷物運ぶくらいは手伝う」

「ベーシュさん…」

…皆、俺に親切過ぎでは?

「まさか、結構です。とは言わないよな?そんな薄情なこと言う奴じゃないよな?ルトリアは」

悪戯っぽくにやり、と笑うミヤノ。

…それ、脅迫じゃないか。

結構ですと言いたいのに、言えない雰囲気。

…お礼…用意しておかないとな。

「じゃあ…お願いしても良いですか?」

「おう!任せろ」

「やって欲しいことがあったら、遠慮なく言えよ」

ありがとうございます。

もう、その気持ちだけで充分です。