Music of Frontier

退院してからというもの、俺はずっとエルフリィ家に居候させてもらっていた。

そして、ルクシーの監視のもと、通院したり投薬の管理をされていた。

しかし、最近の俺はすっかり良くなった。

そして、ついに先日、担当医のエインリー先生から、

「うん。もうお薬は必要なさそうだね」とにっこり言われた。

完治を宣言された訳だ。

とはいえ、身体的な病気と違って、精神的な病気は本当の意味での完治は難しく。

完治ではなく、寛解と言う方が正しい。

今は落ち着いているけれど、ほんの小さなきっかけで、また『再発』する危険性がある。

だから、ひとまず通院はもうしなくても良いけど、少しでもおかしいと思ったらすぐまた来るように、とのことであった。

最後の日はルクシーも一緒に呼び出され、くれぐれもルトリア君をよくよく見ててあげてね、と言われていた。

ルクシーは深々と頷いて、俺がしっかり監視してます、と答えていた。

そんな、俺は保護者の必要な幼稚園児じゃないのだから。

自分のことくらい自分で管理するというのに。

そう言っても、ルクシーは全く耳を貸してくれない。

ともあれ通院の必要もなくなり、お薬も飲まなくて良くなったので。

俺は、かねてより考えていた、独り暮らしの計画を実行に移すことにした。

エルフリィ家と、勤務先である予備校の丁度中間辺りにある、バリアフリー付きの独り暮らし用アパート。

そこが、俺の新しい我が家になる。

こじんまりした部屋ではあるものの、玄関やバスルームには手すりがついているし、家の中を歩いてるとき、杖が引っ掛かるような僅かな段差もない。

一人で暮らすのだから、こじんまりした部屋で充分。

俺はそう思うのだが、ルクシーは最初、普通の一戸建てや、広いマンションを探してくれていたのだ。






「ルトリア、俺が調べてみたところ…この近くで借りられるバリアフリー付きの家は、ここと、ここ…それからこれだな」

「どれどれ?」

独り暮らしの為、物件探しをしていた頃のこと。

俺は、ルクシーが開いているパソコンの画面を覗き込んだ。

俺の場合、バリアフリー付きが必須の条件なので、なかなか見つからなくて一苦労である。

選択肢はあまりないので、限られた中から選ぶしかない。

折角ルクシーが調べてくれたのだから、その中から選ぶつもりだったのだが…。

「どれが良い?」

「…え。広っ」

「ん?」

「広過ぎやしませんか…?俺独り暮らしですよ?」

「…」

これ全部、ファミリー用の物件じゃないか。

俺一人なのに、二階建てガレージ付き一軒家とか。

こっちのマンションも、4LDKだし。

一人で済むには、いくらなんでも広過ぎるだろう。

そんなに荷物ないよ、俺。

これから家族が増える予定も全くないし。

第二帝国騎士官学校の理事長にもらった、多額の慰謝料兼口止め料が手付かずで残っているので、お金には困らないとはいえ。

そんな不相応な家に住むのは…。

第一、管理が大変だ。

「もっとこう…独り暮らし用のアパートとかないですか?」

「独り暮らしって…。あるとは思うけど、でも狭いぞ?大丈夫か?」

大丈夫って、どういう意味での大丈夫…?

「独り暮らしなんだから…独り暮らし用で良いんじゃないですか…?」

「…でも、お前大丈夫なのか?」

「何がですか」

「いや…何て言うか、お前今まで…ずっと広い家にしか暮らしたことないだろう?」

…あ、成程。

そういう意味での大丈夫?だった訳か。