Music of Frontier

生放送故に。

「お前下手だな」とか、「お前は良いからベーシュちゃん見せて」とか、容赦のないコメントがバンバン来るかな…と。

俺は一応、覚悟しておいたのだが。

意外なことにそんな心ないコメントを送ってくる者はなく。

むしろ、大変好意的なコメントばかりだった。

中には、「耳が幸せ(*´∀`)」なんてコメントを送ってくれる人も。

俺の声で幸せって。

その人にだけ、違うものが聞こえているのかもしれない。俺の声じゃなくて。

曲の合間のトークタイムでは、俺の予想以上に色々な質問が寄せられた。

「それじゃコメントにお答えしていこうかなと思います。あ、ごめんなさい足疲れたので座りますね」

失礼。

俺は用意していたカウンターチェアに、ちゃっかりと腰掛けさせてもらった。

ふぅ。ちょっと足が痛くなってきた。

「えー、目についた質問から行きますね。まず…」

一番多い質問は…あ、これだな。

「『ルトリア君って彼女いるんですか』…」

…。

…自分で読み上げといてなんだけど。

君達、もしかしてうちの予備校生?

「…初っぱなから相当な難問ですね…」

「しかもルトリアをご指名か。人気者だなお前」

ルクシーもこの反応。

「ほら、答えてやれよ~ルトリアーヌ。ほらほら」

「ちょ、にやにやしないでもらえます?」

人の悪い笑みを浮かべて、ちょいちょい、と肘でつついてくるエルーシア。

あなた、他人事だと思って。

「…」

何て…答えるべきかな。

いないんだから、素直に「いません!」と言っても良いのだけど。

そんなことを言えば、コメント欄が「やっぱりなw」、「ですよねww」の嵐になるのは目に見えている。

悔しいじゃないか。そんなの。

だからって、いもしないのにいますなんて言えないし。

ファンに嘘はつきたくないだろう?

…じゃあ、何て答えるか。

「…彼女?彼女って何ですか?きっと美味しいんでしょうねー俺は食べたことないけど」

しらばっくれて、誤魔化すことにした。

「はいじゃー次の質問いきまーす」

コメント欄が「逃げたw」、「逃げるなw」の嵐になっていたが、これは気にしないことにして。

次行こうぜ次。

「はい、えーと…『ルトリア君は何処で歌を練習したんですか?』」

何処で…何処で、か。

…ちょっと難問だぞ。

「今まで何処で練習してきたのかってことですよね?何処で…うーん。ボーカルやると決めたときはカラオケ行って練習したりしましたけど…。あ、俺元々はギター担当だったんですよ。ベーシュさんの方が上手かったからあっさりクビになって、ボーカルに回っただけで」

この事実を公表するのは初めてだったので、コメント欄はちょっと騒然としていた。

「マジで!?」とか、「最初からボーカルだと思ってました!」とか。

「試しに歌わせてみたら凄く上手かったから、ルトリアになったんだ。だからボーカルになる前に練習なんか一切してない。天賦の才能って奴」

ルクシーがそう説明した。ちょ、盛らないで盛らないで。

「それどころか、最初は楽譜も読めなかったもんな」

「あはは…そうでしたね。要するにド素人ってことです」

それどころか入院してたよね。

まさか今や、退院してライブハウスでyourtubeのライブ配信してるんだから、人生って分からないものだよね。本当。