Music of Frontier

ポンコツ足で臨む、初めてのライブ配信当日。

そういや、一時間以上もライブするのって、初めてだね。

お前、喉は大丈夫なのかと聞かれそうだが。

カラオケで練習するときは、六時間くらいぶっ続けで喉を酷使しているので、問題ない。



そして、本番15分前。

「皆、観に来てくれますかね…」

この期に及んでも、俺は心配だった。

折角配信したのに誰も観に来てませんじゃ、俺はただカメラに向かって歌ってる可哀想な人になるじゃん。

すると、ルクシーが励ましてくれた。

「大丈夫だルトリア。今のところ200人は待機してるみたいだぞ」

「えっ、そんなに?」

そんなにたくさんの人が来てくれてるの?

どうもありがとう。

だが、まだ安心は出来ない。待機してみたは良いものの、俺の顔が映った途端、やっぱキモいから観るのやめよ、と視聴者数が激減してしまう可能性がある。

一応髪は整えてきたし、ちゃんとお化粧もしてきたのだが…。

一人で良いんだ。最後まで見てね。

でないと俺、ただの恥ずかしい人になっちゃう。

「今日はそんなに緊張してないんだね、ルトリア」

今日も変わらずお美しいベーシュさんが、声をかけてくれた。

「そうですね。そういえば…俺、今日はあんまり緊張してないですね」

「珍しいね。いつもは本番前、世界でも終わるのかってくらい緊張してるのに」

いつもご迷惑かけて大変申し訳ありません。

「今日は、観客を見ながら歌う訳じゃないですからね」

多くの人に見られているのは変わらないが、俺はあくまでもカメラに向かって歌うだけで、見てくれている人の顔が見える訳じゃない。

そう思うと、あんまり緊張しない。

余計なことは考えないでおこう。緊張してしまう。

「そう思うと味気ないよな~。拍手もらえる訳じゃないし」

「それは仕方ないだろ。画面の向こうで拍手してくれてるよ、きっと」

…成程。

俺達の姿は配信されているが、画面の向こうの人が何してるかは、俺達には見えないんだもんな。

拍手してくれてる…手拍子とかもしてくれてるかもしれないが。

もしかしたら、鼻ほじりながら見てる人がいるかもしれない。

別に良いです。鼻ほじってても作業してても良いから、とりあえずページを開いててください。

俺達はそれだけで充分です。

「…よし、そろそろ時間だな。皆、配置につこう」

「はい」

いよいよ、配信一分前。

最初の挨拶もばっちり考えてある。

あとは、それを噛まずに言えるかどうかである。