Music of Frontier

…そして、問題はもう一つ。

予定している配信時間は、およそ二時間。

二時間の間、ずーっと歌い続ける訳にはいかない。

いや、俺はそれでも構わないのだけど…。

ちょっと長いライブだと、しばしば、間にトークタイムを挟むよね。

ライブ配信だと、リアルタイムでコメント送ってくれるだろうし。

送ってくれる人がいれば、の話だが。

まぁ、いると仮定して。

すると俺達も少しくらいはトークタイムを挟んだ方が良いと思うのだ。

ずっと歌いっぱなしだと、聴いてる人もしんどいだろう。

それに、それだと俺の顔だけがずっと画面のセンターにある訳で。

お前じゃなくてベーシュちゃん観に来たんだけど。な人にとっては、拷問でしかない。

折角時間があるのだから、俺以外のメンバーの声も届けたい。

故に、トークタイム。

でも、俺達は芸能人やタレントではないので、トーク力に自信はない。

何の打ち合わせもせずに喋ると、多分収拾がつかなくなって、面白くもないことをダラダラ喋ってしまうことだろう。

聞いてる側からすれば、寒いことこの上ない。

そうなるのを防ぐ為に。

「進行役を一人決めよう。トークタイムをリードする役を」

我らのリーダー、ミヤノがそう提案した。

うん。必要だろうね。

「進行役かぁ…。エルは向いてねぇなぁ、多分」

「私も、喋るの苦手」

エルーシアとベーシュさんは辞退。

いやぁ…ベーシュさんは良いと思うよ。美人だから。

それに、授業で喋り慣れているのでは?

「ここはミヤノかルクシーでしょう」

「何で?ルトリアでも良いじゃないか」

「いや、俺じゃ駄目ですよ。俺はグループで仕切ろうとしたら、一瞬にして『何でお前が仕切るの?』みたいな空気になるタイプだから」

「嘘つけ…。リーダー格だっただろ、お前は」

それは昔の話であって。

今は世の中の陰キャ代表みたいな人間だから。俺。

それに、俺には需要がないよ。世の中の人々が求めているのは、ルクシーやミヤノやエルーシアやベーシュさんのような、美男美女なのだ。

世知辛い世の中だなぁ。

「しかし、誰がやる?進行役…」

「俺も喋るの苦手なんだよな…」

「…仕方ねぇ。ここは厳正に、じゃんけんで決めようぜ。エルとベアトリーヌも参加するよ。こうなったら」

「そうね。平等で良いと思う」

えっ、そんな。

じゃあ俺も加えられるの?

「よし、恨みっこなしだぞ。じゃんけん…」

ぽん。

勝負は、一発で決まった。

「…」

「…」

「…」

「…」

世間の皆様、ごめんなさい。

『frontier』1需要がない男が、見事進行役を射止めました。

「…おめでとう、ルトリア」

「おめでたくないですよ…」

俺だってトーク力ないのに。ってか俺が一番ないのに。

何で俺なのか。

やれと言われたら、やるけどさ。

俺が進行役をやるせいで、視聴者数が半減したとしても、責任取れないからね。