Music of Frontier

本番、30分前。

俺は、緊張のあまりガタガタ震えながら待機していた。

「あぅ~。あうぅぅ~…」

「…」

「ふゅ~…。ふゅはぁ~…」

「…おい、大丈夫かルトリーヌ。さっきから人語を喋ってないぞ。こいつ、こんなんでちゃんと授業出来てんの?」

「大丈夫。授業は分かりやすいって生徒にも評判だから」

「これでかよ」

これでだよ。

もう駄目。周りにいる人全員が、モデルさんに見える。

「俺が一番ブス…。一人だけ顔面がぁ~…。崩壊…」

「大丈夫だって…。ルトリアは何でそんなに、自分の顔に自信がないんだ?」

「イケメンに囲まれてるからですよ!ミヤノとかベーシュさんとかルクシーとかエルとか!こんなイケメン美女に囲まれたら、フツメンだってブサメンに見えるものなんですよ!」

ビー玉だって単体で見ると綺麗に見えるけど、ダイヤモンドと並べたらガラクタにしか見えんだろう。それと一緒!

いや待て。俺単体なら格好良いみたいな言い方をするな。

単体だろうと何だろうと、ブサはブサだよ!

「ましてやこんなイケメン揃いのバンドばかりで。見てくださいよあのボーカル。超渋いイケメンじゃないですか!俺もあの人ほど格好良かったら、堂々としてますよ!」

「いや…あの人とルトリアなら、ルトリアの方が格好良くないか…?」

あーまたミヤノがそういうこと言う。

俺、騙されないから。

「俺達の前の人が更なるイケメンだったら、恥ずかしくてステージに上がれません。能面持ってきます」

「…重症だな…」

「ちょっと面倒臭くなってきたね」

ベーシュさん。酷い。

すると、俺の相方のルクシーが。

「あーっ、もう、うるさい奴だな、お前は!」

怒った。

激おこルクシーぷんぷん丸になった。

ルクシーは俺の肩をガシッ、と掴んで、こう言った。

「良いか!ルトリア、お前はブスだ!不細工だ!この会場で一番のブサメンだ!」

「ですよね!俺もそう思ってました!」

やっと分かってくれたんですね、ルクシー!

でも何でだろう。そんなにはっきり言われると、ちょっと心が痛いです。

「だからそのぶん、歌で挽回しろ!顔が不細工な上に歌まで下手くそだったら恥ずかしい!そうだろ?」

「そうです!」

「なら、人間は顔だけじゃないってことをステージで思い知らせてやれ!『あいつ顔面はアレだが、歌は上手いな』って言わせてやれ!良いな!」

「成程!分かりました、頑張ります!」

「よし!」

それなら、俺も頑張れそうな気がした。

元気が出てきたぞ。

「よーし、俺頑張りますよ。この顔面に負けない歌を披露します!」

「頑張って、ルトリア」

「…凄い立ち直り方してんな、ルトリーヌ…。元気出たなら良いけど」

「さすがルクシー…。ルトリアの扱い方を分かってるな」

「まぁな」

一度認めてしまうと、自分の顔面があまり気にならなくなってくるのだから不思議。

ルクシーの言う通り。俺はこの会場で、一番のブサメン。

でも、歌なら負けない。

動けるデブならぬ、歌えるブスになるぞ。俺は。