Music of Frontier

その日、ライブハウスの人口密度は、いつもよりずっと高かった。

いつもはちらほら空いているはずの席が、今日は満席。

立ち見の観客も大勢いて、観客席は最早すし詰め状態だった。

俺達がステージに出ると、観客達は明らかに興奮し、歓声をあげてくれた。

むしろ俺達の方が気圧されてしまった。

ちょ、あなた達落ち着いて。そんなに興奮しないで。

ライブハウスがパンクしてしまうんじゃないかと心配になってしまう。

ここまで期待してくれているのなら、応えねばならない。

俺は観客の勢いに負けそうになりながらも、いつも以上に気合いを入れて歌いきった。

不思議と、今日は緊張しなかった。

緊張より、困惑と驚きの方が勝っていたのだ。

そもそもライブハウスでのライブは、30分程度なので、緊張する暇もない。

そしてその30分は、あっという間に終わってしまった。

これで終わりです、今日は大勢の皆さんに来てもらってありがとうございました、といつもの挨拶をしようとしたところ、唐突にアンコールを言い出す客が出始めた。

それには、俺も度肝を抜かれた。

アンコールって、あなた。

次のバンドが控えているので、基本的にアンコールは受け付けていないのだが。

でも、アンコールに応えずに帰らせてくれる雰囲気ではなく。

急遽、ライブハウスの経営者であるミヤノの親戚がゴーサインを出し、一曲だけアンコールにお応えした。

挨拶もそこそこにライブを終え、俺達が舞台袖に引っ込むと。

観客の皆さんは、割れんばかりの拍手で送ってくれた。

悲惨なのは次のバンドだ。アンコールのせいで余計に待たされた挙げ句、この空気の中出ていかなくてはならない。

お待たせして済みません、と頭を下げ、俺達は控え室に戻った。