Music of Frontier

「…」

「…」

「…」

「…大丈夫か、ルトリア。帰ってこい」

「…」

俺はぽかんとしたまま、時が止まっていた。

「…仕方ない。ベーシュ、ルトリアをぶん殴ってくれ」

「分かった」

スパーンッ!と鋭い音と共に、頭が揺れるほどの衝撃が後頭部に走った。

ベーシュさん、あなた本気で。

「いだぁ!」

「戻ってきたか?ルトリア」

「ふぁ!?ちょ…ふぇ…」

「…」

俺はルクシーの顔をじっと見つめ返した。

彼が冗談を言っているのだと思った。

「…全くもう。思わず驚いちゃったじゃないですか。ルクシーったら冗談キツいですよ」

「…何が?俺は冗談なんて言ってないぞ」

「ルクシーったら冗談キツいですよ」

「冗談じゃないって言ってるだろ。本当のことだ」

「ルクシーったら冗談キツいですよ!そういうことにしてください!」

「悪いが冗談じゃないんだ。受け止めてくれいい加減に」

…なんてことだ。

ちょっと、ちょっともう頭の中色々テンパってて大変だから、俺。

状況を整理させてもらおう。

今夜のライブハウスには、いつもの十倍近い人々が詰め寄せてて。

てっきり何か事故でも起きて、その野次馬かなと思っていたら。

彼らは俺達『frontier』のライブを聴く為にやって来た観客だと。

そういうことか。そういうことだと言うのか。

…本当に?

とても信じることは出来ないが、ルクシーもミヤノもエルーシアも、嘘を言ってるようには見えなかった。

ルクシーは、そんなつまらない冗談を言う人ではないし。

「エル達がここに来たとき、観客に取り囲まれて大変だったよ。なぁ?」

「あぁ。『『frontier』の方ですよね!?』って詰め寄られてな」

「俺達も驚いたよ。まさかこんなことになるとは…」

…こんなことになるとは思っていなかったから。

「次のライブいつですか?」のコメントに、「○月○日です♪」と軽い気持ちで答えてしまったのだ。

その結果が、これ。

「他のバンドの方に申し訳なくてな…。皆死んだような目をしてたよ…」

「…」

…そうだろうね。

俺達だけのソロライブじゃないからね。

複数のバンドで、30分くらいずつで分けてるから。

そりゃ他のバンドからしてみりゃ、俺達は忌々しいだろう。

ごめんなさい。本当ごめんなさい。

謝るので許してください。

「それにしても…何で今日に限ってこんなにたくさんの人が…」

「最近のTwittersフォロワー数とチャンネル登録者数激増のお陰だろうな。俺達の知名度は…多分、俺達が思ってるより上がってきてるんだ」

「…」

知名度が、上がってる、か。

自分で言うのは大変おこがましいが…そうなのかもしれない。

この観客の数を見れば、一目瞭然というもの。

素直に喜んで良いものか…どうなのか。