Music of Frontier

「…電話、何だったの?」

スマホをしまっていると、ベーシュさんが尋ねた。

「何だかよく分からないんですけど…。忍者になれ、って…」

「忍者…?」

「ベーシュさんも忍者になってくれって」

「…くの一…?」

そうなるね。

「ともかく、目立たないように裏口から来てくれって言ってました」

「何かあったのかな?」

「多分…。詳しくは聞いてませんけど」

そんな…人目を忍んでこそこそしなきゃいけないような理由があるの?

あ、もしかして。

「ライブハウスの近所で事故でもあったんですかね?」

それでライブハウス周辺が野次馬やニュースキャスターで一杯だから、こそこそ来い、ってこと?

「有り得るかもね」

「怖いですねー…。嫌な事故じゃなければ良いですけど…」

まさか殺人事件!とか火事!だったら、その近くでライブなんて不謹慎だもん。

それに、もしそうなら…今日のライブ、観客少なそうだなぁ。

「今日のライブハウスは閑散としてるかもしれませんね…」

「最悪、観客0人の中でライブしなきゃいけないかも」

「それは嫌ですね…」

観客0人って。それ最早ライブではなく、カラオケでは?

せめて、常連さんだけでも来てくれたら良いのだけど。

最近、よくライブハウスに来てくれている人の顔を覚えてきた。

顔馴染み、って訳だ。

馴染みの常連さんだけでも来てくれたら、歌い甲斐があるのだが…。

「とにかく、そういうことなら俺達もこっそり行きましょう」

野次馬の一人だと思われたら癪だからな。



…などと、軽い気持ちでライブハウスに向かったことを、俺達は後悔することになる。