Music of Frontier

集合場所にて。

「もう駄目だ…。俺はこのまま、一生『『frontier』の寝癖』って呼ばれ続けるんだ…。こんなことなら昨夜、寝なきゃ良かった…」

「…おい、大丈夫か。我らのボーカルは」

「今朝からずっとこんな調子なんだ。何とかしてやってくれ」

こんな大事な日に、髪型が決まらないなんて。

情けないにも程がある。

「そもそも、何に落ち込んでるんだ?」

「髪型が決まらないんだってさ。寝癖が直らないって」

「…それは…その、災難だったなルトリア」

慰めてくれてありがとう、ミヤノ。

でも、災難なのはこれからです。

皆の前でこの寝癖を晒さなきゃならないんだから。

いっそ刈ってやろうか、バリカンで。

そんな暴挙を考え始めた、そのとき。

俺の救世主が現れた。

「ヘアアイロン持ってきてるんだけど、貸そうか?」

女性の中の女性、ベーシュさんが申し出た。

「えっ、ベーシュさん。ヘアアイロン持ってきたんですか」

「うん。ライブのときはいつも持ってきてるよ」

さすがベーシュさん。

「でも…。ヘアアイロンなら、今朝もやってきたんです。俺、下手くそで…。右だけ上手く行かなくて…」

「なら、俺がやってやろうか。ヘアアイロンあるなら」

そう申し出てくれたのは、ミヤノであった。

…ベーシュさん、ミヤノ。

あなた達は、神ですか。

「お願いします~!ありがとうございます~!」

「よし、じゃあ早いところ始めよう」

「それは良いけど、何処でやんの?コンセント要るだろ?」

「出演者用に控え室用意してくれてるらしいから、そこで」

その後、ベーシュさんがヘアアイロンを提供してくれ、そしてミヤノが俺の寝癖を丁寧に直してくれたお陰で。

俺のあだ名が「左右非対称」になる危険性は去ったのであった。