Music of Frontier

「不安っていうのは…どういう意味の不安ですか?」

「何て言うか…。ライブハウスで行うライブとは違って、多くの人に見られる訳だろう?」

…そうなるね。

ライブハウスは、一杯人が入っても50人以上に見られることはない。

でも、駅だと…駅を利用する人々、全員に見られることになる。

「しかも、ライブとかバンドとか、全く興味ない人にも見られる訳だし…。ライブハウスと違って、金取って入場する訳じゃないし…。変な奴らにこっそり録音されたり、写真撮られたりしたら困るな、と思って…。心配し過ぎかもしれないけどさ」

「…確かに…」

…観客が多い、ってことは。

それだけ…何て言うか、モラルに欠ける観客が訪れる可能性も高くなる、ってことで。

「心配し過ぎではないだろ。俺もその不安はある。俺らはともかく、ベーシュは美人だしさ。変な奴に目をつけられてもおかしくない」

ミヤノの言う通り。

「…でも、私ソロで活動してたときも、路上ライブしてたよ?」

「ベーシュ…。お前な、自分が美人だってことを自覚しろよ…」

…ちょっと危機感に欠けるよね、ベーシュさん。

変な奴がベーシュさんの隠し撮り写真を撮って、ゲヘヘ笑いしてるかと思うと。

ちょっとそいつ杖で突いてやろうかなって気にもなるだろう。

しかし、エルーシアは。

「つってもなぁ、もう既にyourtubeに素顔晒してる訳じゃん。今更じゃね?」

「…まぁ、それもそうなんだよな」

エルーシアの言い分も分かる。

顔バレ怖いとか、そんなこと言ってちゃバンド活動は出来ない…と言われればそれまで。

「…それに、この話は断るには惜しい。こんな機会、滅多にないからな」

「…俺もそう思います」

「私も。断るのは勿体ないと思う」

これを断ったら、もうこんなチャンスは当分回ってこないだろう。

一生ないかもしれない。

そう思うと、顔バレ怖いからやめとく…は、あまりにも勿体ない。

「やりましょう、ルクシー。ここは…決断するときです」

「…分かった。そうだな、ルトリア。やろう」

少し考えてから、ルクシーは頷いた。

これで、全員賛成か。

「じゃあ、参加するって返事しておくよ。皆、やるからには気を引き締めてやろう」

「はい」

当然、俺もそのつもりである。

…美容院、行っておかないとな。