Music of Frontier

およそ、一時間後。

『frontier』のメンバーは、駅前のファミレスに集合していた。



「悪いな、皆。忙しいのにいきなり呼び出して」

「いえ…。俺も授業終わったところでしたし」

タイミング的には、ばっちりだった。

「それで…相談したいことっていうのは?」

「あぁ…。締め切りが近くてな、早く集まりたかったんだ。これ、ライブハウス経営してる親戚が、応募してみないかって」

「…?」

ミヤノは、一枚の書類をテーブルの上に出した。

何だ?これは。

「帝都○○駅イベント…参加者募集…?」

「そう。これに応募してみないかと思って」

…成程。

「これって…あれですよね。駅前で…路上ライブする、ってことですか?」

「まぁ、そんな感じだな。駅の方が主催してるイベントだ」

俺もたまに、見たことがある。

あれだよね。駅で歌ったり、楽器を弾いたりしてる人。

誰しも一度や二度は見たことがあるんじゃないだろうか。余程長閑な駅でない限り。

「実は、これ…親戚のライブハウスに来てる別のバンドが出演予定だったらしいんだが、急遽そのバンドが出られなくなったそうで。親戚が、『ミヤノのバンド、出てみないか?』って誘ってきたんだ」

「そうだったんですか」

持つべき者は、ライブハウス経営してる親戚だな。

本当助かります。

「駅で歌うのか…。ライブハウスなんか目じゃないってくらい、多くの人に見られるな」

と、ルクシー。

その通り。ライブハウスでのライブは、ライブハウスに聴きに足を運んでくれた観客だけに聴かせる。

つまり、聴く気のある人が集まってる訳だ。

でも、駅でのライブだと話は違う。

単に駅を利用しようとしてるだけのお客さんが大半なのだ。

嫌な言い方をすると…聴きたくもないのに、ただ電車に乗ろうと駅に来ただけで、下手くそな歌を聴かされる訳だ。

興味ない人にとっては苦痛だよね。

「ちっ、今日なんか変なことやってんな。うるせぇ」なんて思われて終わり。

でも一方で、普段ライブハウスに足を運ばない人手も、興味を惹けばその場で足を止めてくれる訳だ。

もし参加すれば、俺達の知名度を飛躍的に上昇させ得る…かもしれない、千載一遇のチャンスである。

「良いですね…。やりましょうか、俺は賛成です」

「おー。エルも良いと思うぞ」

「私も賛成。前は、私一人で路上ライブしてたことあるし」

あ、そうか。

ベーシュさん、『frontier』に来る前はソロで活動してたんだもんね。

なら、屋外ライブの心得はバッチリだな。

しかし。

「俺も賛成ではあるけど…ちょっと、不安でもあるな」

「…まぁ、気持ちが分からんことはない」

ルクシーとミヤノの二人は、慎重派であった。

…不安?