Music of Frontier

…と、思ったのだけど。



「あ、ルトリア先生~!おはようございまーす」

「…おはようございます…」

今日からはビシッ、と行こう。

そう決めて、出来るだけ神妙な顔つきで教室に入ってきたのに。

しょっぱなから、凄く気楽に、手を振りながら挨拶されてしまった。

帝国騎士官学校だったら平手打ちだ。そんな気の抜けた挨拶。

でも、ここは帝国騎士官学校じゃないし…。

挨拶くらいは、気さくでも良いか。

問題は授業。授業を厳格にやろう。

「はい!それじゃ始めますからね」

まずは昨日指示しておいた課題の確認を…、と思ったら。

早速、一番手前の女子生徒が。

「ねぇ先生~。恋人にするなら、年齢差は何歳までアリですか?」

またしても、そんな下世話な質問を投げ掛けてきた。

昨日の俺だったら、たじたじと、「え、そ、そんな…」みたいな薄ら寒い反応をしただろうが。

今日の俺は厳格なルトリア先生なので、そんな質問には動じない。

「残念でしたね。今日から、授業中に関係ない話は厳禁!ビシバシ行きますから!授業に集中です!」

見たか。俺だって言うときは言うんだぞ。

しかし、最近のJK、そんなことでは動じなかった。

「え~?それじゃ、授業の後だったら良いんですか?」

「えっ…?」

…授業の、後?

…まぁ、授業の後だったら…授業に関係ない話をするのもアリかな。

メリハリって大事だもんね。

授業は授業。それ以外はそれ以外。ってね。

「それは…良いんじゃないですか?うん、授業の後なら…」

「分かりました~!じゃ、授業の後一杯質問しまーす」

…あれ?

俺、もしかしてとんでもない墓穴を掘ったのでは?

いや、そんなことより今はまず授業。授業を開始しなくては。

「それじゃ、授業を再開しますよ。まず昨日出しておいた課題を、皆で確認します。はい、そこのあなた…アオイさんでしたね。問1の訳はどうなりましたか?」

生徒の名前については、昨日初めての授業の後、皆が一人ずつ自己紹介してくれた。

予備校では皆名札をつけてないので、名前を覚えるのも大変である。

すると、アオイさんは、

「えぇっと…。昨日、頑張って訳してみたんですけど…。分からなくて…」

「えっ、そうなんですか」

ちょっと難しかったか。

「分かるところまでで良いですよ。途中まででも解けましたか?」

「えっと…『彼は革命に命を利用した』ってところまでは分かったんですけど」

成程、大筋は訳せているようだな。

これが帝国騎士官学校なら、「『分からない』が通用するか!分かるまで考えろ馬鹿者が!」と怒鳴られるところだが。

俺はこのクラスを、「分からないところは素直に分からないと言える」クラスにしたい。

分からないことが分かってるなら、これからいくらでも学ぶことが出来るのだから。

そして、分からないところがない生徒に、教師なんて必要ない。

というのが、俺の持論なので。