Music of Frontier

「あうぅ~…」

授業が無事に終わり。

帰宅した後、俺は思いっきり脱力してしまった。

心配そうに待っていたルクシーが、すかさず、

「大丈夫か。上手く行かなかったのか?」

と、尋ねてきた。

ありがとう。心配して待っててくれてたんだね。

「なんか、俺が思ってたのと違う…」

「そうか…。予想以上に大変だったか?お疲れ様、ルトリア」

本当にお疲れ様だよ。

「言うこと聞かない生徒ばかりだったのか?」

「…ある意味」

「ある意味…?」

ある意味で、言うこと聞かない生徒だったよ。

当初心配していたような、不良生徒が一人もいなかったのは喜ばしいことだ。

授業中スマホポチってる生徒はいなかったし。

内職に精を出す生徒もいなかった。

この先生マジブサメンwwないわwwとか言って笑われることもなかった。

いや、もしかしたら陰で言われてる可能性はあるが。

教え方が下手過ぎて分かりません、と苦情を入れられることもなかった。

これらは大変喜ばしい。のだけど。

「…マスコミに囲まれる芸能人って…あんな気持ちだったのかな~って…ちょっと思いました」

「はぁ…?」

今日の結論。

女子高生、怖い。

「あの子達、延々と俺に変な質問ばっかりしてくるんですよ!『先生何歳なんですか?』は別に良いですけど、『今まで付き合った人数は?』とか、『好みのタイプは?』とか。『男と女どっちが好きですか?』なんて聞いてくる人までいたんですよ!そんなの男に決まってるじゃないですか!」

「…お前、その発言は色々と誤解を招くぞ…」

あれ?そう?

違うよ。俺、女の子に全く免疫がないってだけで。

あぁもうそんなことはどうでも良い。

「挙げ句の果てに、『先生かわい~♪』なんて血迷ったことを言う始末!あの子達あれですよ。相槌代わりに可愛いを連呼するタイプですよ」

「まぁ…最近の女子は『可愛い』が口癖みたいなもんだからな…」

男の偏見と思ってくれて構わない。

でも、ぶっちゃけ便利な言葉だと思ってない?キモいもの以外は全部「可愛い」で済ませてる人いるでしょ。

世の中を「キモい」と「可愛い」だけで区別してるんだよきっと。

いや待て。世の中には「キモ可愛い」と言う、摩訶不思議な言葉がある。

…やっぱり何でも「可愛い」で片付けてるんじゃないか!

あれ?もしかして俺に対する「可愛い」って、「キモ可愛い」的な意味だったりする…のか?

…うん。考えないことにしよう。

キモくても良いじゃないか!

「で…質問攻めに遭って、授業は聞いてもらえなかったと?」

「授業は…一応聞いてくれましたけど、なんか俺を見てにやにやしてたり、隣の子と肘つつきあってたり…。落ち着かない感じで…」

君達絶対真面目に聞いてないでしょ。頭の中、別のこと考えてたでしょ。

先生、見てたら分かるんだからね。

先生が俺で良かったね。帝国騎士官学校だったら、間違いなくビンタが飛んでたよ。

全くあの子達と来たら。最近の女子高生は何考えてるのか分からない。

元々分からなかったけどね。

「それもそうだろ…。お前みたいな、若くてイケメンな新任講師が来たら…女子高生はそりゃ興奮するだろうよ」

ルクシーまで血迷ったことを言い始めた。

駄目だ。今日は皆、頭がハイになってるんだ。

「あぁ、俺はもう寝ます。明日こそ、きっと真面目に授業してみせますから」

「…そうか、頑張れ。お休み」

「えぇ、お休みなさい」

何でも質問出来る、気さくな先生になるつもりだったけど、あれはやめた。

明日から俺は、とっても真面目で厳格な、教育熱心な先生になる。