Music of Frontier

「はぁ~…。良いのな~い…」

「何を見てんだ?ルトリア」

最近ちょっとご無沙汰になっていたが、俺にはやるべきことがある。

そう、職を探して、エルフリィ宅を出て独り立ちすることである。

故に、こうしてバンド練習の合間に、就職情報誌を読み耽っている訳だが。

…なかなか見つからないもんだなぁ。

「職探しか…。まぁ、ルトリアはちょっと難しいよな」

ミヤノは、少しぼかして言ってくれたが。

要するに、足のハンデのことだ。

「そういえば、ミヤノとエルーシアはお勤めしてるんですよね」

「あぁ。うち、実家が楽器屋やってるから」

「エルはミヤーヌん家の店と、別のとこでもでバイトしてる。フリーター」

成程、フリーター。それも良いかも。

「何処か良い就職先知りません?俺の…この足でも出来そうなところ」

取り柄と言えば、頭の良さくらいだが。

どうにかならないものか。

すると。

「…ルトリア、職を探してるの?」

隅っこでギター練習していたベーシュさんが、俺に声をかけてきた。

「え?あ、はい…」

探してますけど…。

ベーシュさんから話しかけられたことってあんまりないから、びっくりしてしまった。

「だったら…もし良かったら、私の職場に来ない?」

「え…?」

ベーシュさんの…職場?

とは、いかに。

誘ってくれるのは大変有り難いけども…俺でも行けるのだろうか?

「ベーシュさんもお勤めなんですね。失礼ですが、何処に…?」

「私、帝都にある予備校で講師をしてるの」

…衝撃の新事実。

ベーシュさんが、予備校の先生だった。

「へぇ…。ベーシュさん、予備校の先生だったんですね」

「うん」

「ちなみに、ご担当の教科は…?」

国語とか?歴史とか?アシスファルト語とか?

「数学」

数学だと?

さてはベーシュさん、理系女子って奴だな?

ますます美しい。

「予備校で教えてるのは、主に五教科…。国語と数学、アシスファルト語、社会、理科の五つなんだけど、どれか得意な科目はある?」

予備校…って言うと、あれだよね。

大学受験浪人生が通う学校で、受験に使う五教科の勉強をしたり、受験のサポートをしたり…。

得意な科目…か。

俺は生憎、ちゃんと帝国騎士官学校を卒業していないが…。

高校生で勉強する範囲なら、基本的には修めている。

伊達に国内最高峰の学校に在籍していた訳ではない。

心配な点と言えば、しばらく学校の勉強から離れていることだが…。

今からみっちり復習すれば、全盛期の頃まで戻れるかも。

で、俺の得意科目と言えば…。

「…基本的には、どの科目でも大丈夫だと思います」

俺は理系文系のどちらかに偏っているタイプではなく。

割と、万能型の脳みそをしているので。

余程レベルの高い予備校でない限りは、どの科目でも大丈夫だと思われる。

「どの科目でも良いの?ルトリア、頭が良いのね」

「まぁ…それだけが俺の取り柄みたいなものですからね」

この唯一の取り柄を生かせるのなら、願ったり叶ったりである。

「もしベーシュさんの勤める予備校で雇って頂けるのなら、口利きしてもらえると有り難いです。非常勤でも大丈夫なので」

「分かった。上司に話しておく」

…思わぬ、救世主である。

持つべき者は、予備校に勤めるバンド仲間だなぁと思った。