Music of Frontier

病院からの、帰り道のことだった。

エインリー先生と話し込んでしまったこともあり、辺りは既に暗くなり始めていた。

急いで帰らないと、ルクシーが心配するかもしれない。

杖をつきながら、バス停に向かって歩いていた。

そのときだった。

「…ん?」

強烈な寒気を感じて、俺はぶるっ、と身体を震わせた。

…何だ?

何処からか、妖艶な…嗅ぐだけでくらっ、とするような香水の香りがした。

何事かと顔を上げると、向こうから、黒ずくめの服を着た二人組が歩いてきた。

「うふふー、ルルシー。夜ですね。俺が輝き出す時間ですね!」

「お前はいつでも輝いてるだろうが。フェロモン振り撒きながら歩くのやめろ」

…何なんだ、あの…エロい人は。

男同士なのに相棒と腕を組み、妖艶な香水の香りをぷんぷんと漂わせ。

フェロモンを振り撒くその人の顔には、惜しげもなく化粧が施されていた。

凄い。あの人…あんなに堂々とお化粧してる。

口紅はつけてないけど、アイラインもアイシャドウもしてるし、ファンデーションもつけてる。

それどころか、頭に派手な髪飾りをつけて、胸には何かを象徴するような、青い薔薇のブローチ。

着てる服だって、真っ黒でひらひらして…あれ、何て言うんだっけ?ゴスロリ…的な?

俺には目もくれずに、彼らは遠ざかっていったが。

俺にとっては、とてつもない衝撃だった。

…あの人、あんなに堂々と化粧してた。

男なのに、お化粧して、派手な服を着て、アクセサリーをつけて、堂々と街を歩いていた。

なんて格好良い。

男が着飾るなんてみっともない~とか、うじうじしていた自分がアホらしい。

俺はあの人の半分の半分もイケメンじゃないけど、俺もあの人みたいに、堂々と自分を見せたい。

自分を着飾ることに性別なんて関係ないし、何も恥ずかしいことじゃないから、堂々としていれば良いんだ。

俺は彼を見て、そう思った。

…まぁ、彼の場合…ちょっとフェロモンが強烈過ぎて、あまり参考にならないかもしれないけど…。