Music of Frontier

俺の元気が戻ったのは良いが。

それはさておき、とエインリー先生は顔を曇らせて、声を低くしてこう尋ねた。

「それと…こんなことはあんまり聞きたくないんだけど、ルトリア君」

「はい?」

「その…動画には、顔も出すのかな?」

「…そのつもりです」

結局覆面は使わない、って話になったし。

「そっか。いや、それは構わないんだけど…。その…yourtubeにアップするということは、多くの人に…誰でも君の顔を見ることが出来るということだよね」

「…」

言い方は遠回しだったが、エインリー先生の言いたいことはすぐに分かった。

そうだね。顔が映った動画をyourtubeにアップしたら…俺が今、何処で何をしてるのか、バレるね。

マグノリアの実家や、第二帝国騎士官学校の関係者にも。

「…彼らが目にするほど、人気が出るとは思ってませんけどね」

あの人達が、ネットサーフィンしてて偶然見つけました、なんて有り得ない。

そもそもyourtube見るような趣味はないだろうし。

でも、もし万が一。

万が一、俺達の動画が有名になってしまったら…嫌でも目にする機会はあるだろうね。

有名にならなかったとしても、偶然俺の顔を知っている人が、動画を見つけたら。

簡単にバレる。

それは、俺も覚悟している。

「…別に、悪いことしてる訳じゃないですから。最悪、バレても構いませんよ」

そもそも、俺はマグノリアの家からは絶縁されている。

もうマグノリアを名乗ることすら許されない身の上なのだ。

守るべき家の面子も体面も体裁も、何もない。

俺が何処で何をしていようが、彼らの知ったことではない。

彼らには、もう関係ない。

俺は、他人になったのだから。

「それに、ミュージックビデオでは俺は杖を持たずに歌いますから」

足のことがバレる可能性もない。

杖がなくても立つだけなら普通に出来るようになったし。

歩くのだって、短い距離なら杖なしでも歩ける。

もし動画を見られたとしても、困ることは何もない。

…はずだ。

「まぁ…恥さらしだから動画を消せ、くらいは言ってくるかもしれませんけどね」

「…そう」

マグノリア家にいた頃だったら、絶対許されないようなことだっただろうね。

大衆の前に顔を晒し、馬鹿な格好をして、下手くそな歌を披露して。

そんな俗っぽいことは、両親のもっとも嫌うものだった。

でも、何度も言うが…俺はもう、あの家とは何の関わりもない人間だ。

「何を言ってきても無視しますよ。俺はもうあの家の人間じゃないんだから、従う義務はありません」

「…そう。そこまで覚悟してるのなら、止めないよ。精一杯、やりたいようにやりなさい」

勿論、そのつもりである。

今は、これが俺の人生なのだから。