Music of Frontier

「…何やってるんだ?ルトリア」

鏡とにらめっこする俺を見て、ミヤノは怪訝そうな顔をしていた。

何やってる、って…。

「いえ…本番ではどれをつけるか、迷ってたんです」

「どれ…?どれって?」

「これですよ」

俺は、ボストンバッグに詰まった何種類もの覆面を取り出した。

これはプロレスのマスク、こっちは白塗りの目出し帽、これはドミノマスク、これはガスマスク。

さすがに口が隠れていては声が出ないので、目はともかく口だけは出さなくては。

「…何で、そんなもの持ってきたんだ…?」

ミヤノは、訳が分からない、という顔で首を傾げていた。

何でって…。

「撮影に使うと思ったものですから。色んなところからかき集めてきたんです」

「撮影に…?何で?」

「何で…って言われても、仕方ないじゃないですか。そのままの顔で出る訳にはいきませんし」

「えっ…」

えっ…って、何?

何が「えっ?」なの?

「ま、まさかミヤノ、俺に覆面もつけずに出させるつもりだったんですか?」

「え…?あ、いや…。ごめん。配慮が足りなかった」

本当に?本当に素っぴんで出させるつもりだったの?

「俺は顔を出しても良いと思ってたから…。ごめんな、ルトリアは…顔出しNGだったか」

「そりゃ、俺は嫌ですよぅ…」

こんな顔、公衆の面前に晒すなんて恥ずかしいにも程がある。

覆面つけてても恥ずかしいくらいなのに。

「そうか…。じゃあ、ルトリアだけ顔を隠すってのもな…。俺達も顔、隠すか?」

ミヤノは、ルクシーやエルーシアに向かってそう尋ねた。

「俺は別に隠さなくても良いが…。でも、ルトリアだけ隠すのもな。じゃ、俺も仮面でもつけるか」

「エルはどうしよ。だて眼鏡くらいつけとくかな。ベアトリーヌは?」

「じゃあ、私は般若のお面をつけるよ」

え?

今度は、俺が「え?」と言う番だった。