Music of Frontier

…非常に不本意ではあるが、無事に新しいバンド名が決まった。

…チェンジで!とか言えたら良いのだけど、生憎チェンジも出来ず。

俺達は『frontier』になってしまった。

こんなことになるならもっと、ない頭を捻って、もう少し格好良い名前考えれば良かった。

なんて、後悔しても後の祭り。

「それから、皆。新しいバンド名も決まったことだし、これからの活動方針について、俺から提案があるんだが」

と、ミヤノ。

これからの活動方針…か。

「何ですか?」

「これから俺達は、本格的にバンド活動をすることになる訳だが…。バンドの機会については、ライブハウス経営してる親戚に頼むから、問題ない」

コネってことだよね。

コネでも何でも、ライブが出来るのは有り難い。

「で、それは良いとして…。提案って言うのは、ライブハウスでライブする以外にも、俺達で歌ってるところを動画にして、動画投稿サイトに投稿しないか、ってものなんだが」

「…ほう…?」

動画投稿サイトに、歌ってる動画を投稿?

俺はあまり詳しくないから、そういうことはピンと来ないのだが…。

「そういうのって、アリなんですか?」

「駄目ではないだろう。むしろ、最近のバンドは、動画投稿するのはよくあることだぞ」

ルクシーが言った。

そうなんだ。それは知らなかった。

俺、動画投稿サイトなんて全然観ないもんな。

「今流行りの…ユアチューバー、って奴ですね」

「そうそう、それだ」

動画投稿サイト『yourtube』に様々な動画を投稿して、広告収入を得るとかいう。

俺達の場合、お金目的で投稿する訳ではないが…。

「yourtubeに投稿すれば、色んな人が見てくれる。もし人気が出れば、活動の幅も広がってくると思うんだ」

「成程…。確かに、そうですね」

現実そんなに上手くは行かないだろうが、理想を語るだけなら自由。

それに、例え人気が出なかったとしても…。『色んな人に自分達の歌を聴いてもらえる』ことは、俺達にとって励みになるはずだ。

「良いねぇ。楽しそうじゃん」

エルーシアも乗り気である。

一方、ベーシュさんは。

「私も賛成だけど…でも、動画投稿ってそんなに楽じゃないと思う。撮影や編集はどうするの?」

…言われてみれば。

「撮影機材は、中古やレンタルで揃えるとして…。編集は…」

「編集は俺がやろう。独学だが…多少心得がある」

ルクシーは片手を上げて、そう申し出た。

マジでか。

「ルクシー、そんなこと出来るんですか」

「こういう機会もあるかと思って…少しだけな。まだ素人だが」

「少しでも出来るんだから凄いですよ。俺も勉強して、ルクシーのお手伝いします」

そのくらいことは、俺もやらなくては。

『frontier』の名付け親として。