Music of Frontier

まず一つ目。『Eternal Blue Rose』。

「これ、誰の候補名ですか?」

「俺だ」

名乗りを上げたのはルクシー。

さすが。めちゃくちゃ格好良いと思ったらやっぱりルクシーか。

こっちにしようよ。

二つ目。『翼をなくした天使達』。

「これは…誰のですか?」

「あぁ、それ俺だ」

ミヤノである。

「『ダーク・エンジェルズ』を踏襲しつつ、かつ最近の若者が好きそうな名前かなと思って」

そうね。そんなバンド名だったら検索かけたくなるよね。

こっちにしようよ。こっちが良いよ。

三つ目。『前世は勇者だったけど、転生したら人間だったのでバンドすることにしました』。

「…??」

「ぽかんとするなルトリーヌ。これエルだ」

「これがバンド名なんですか…?」

「いや、最近若者に流行りのさぁ。なろう系ラノベのタイトルっぽいかなぁと思って」

成程。狙ってる層が明白だな。

案外こういうバンド名の方が、人目を引いて良いのかもしれない。

最近、ちょっと個性的なバンド名の方が流行ってる感じするもんね。

次。四つ目。『The Invaders』。

「これは…消去法で、ベーシュさんの候補名ですよね」

「そうだね」

道理でセンスに満ち溢れてる訳だ。

「ベアトリーヌ、invadersってどういう意味?」

「侵略者達、って意味」

「めちゃくちゃ格好良いな、おい」

俺もそう思います。

駄目じゃん。俺の候補が一番ダサい。

それなのに、よりにもよって俺の候補名が選ばれてしまうなんて。

「俺のはやめましょうよ。ベーシュさんのにしましょうよ」

侵略しようぜ。格好良いし。

それなのに、ミヤノは。

「いや…異論はないって言っただろ。良いじゃないか、『frontier』で」

「えぇぇ!」

「厳正に決めたんだから、覆す訳にはいかんだろ。良い名前だよ、『frontier』。これにしよう」

そんな、ミヤノ。

晩御飯のメニュー決めるんじゃないんだから、もっと真剣に。

「えぇんじゃね?『frontier』。格好良いよ」

「そうだな。今日から俺達は『frontier』だ」

「私も異論はない」

エルーシア、ルクシー、ベーシュさんが順々に頷いた。

ベーシュさん。せめてあなたは異論を唱えて欲しかった。

絶対あなたの候補名の方が格好良いのに。

俺の必死の抵抗も虚しく、俺達は今日から、『frontier』と名乗ることになった。