Music of Frontier

およそ、十分後。

ティッシュの空き箱の中に、五枚の紙が放り込まれた。

冷静に考えれば、居酒屋でやることではないが。

乗り掛かった船、という奴である。

「よし、じゃあこの中から俺が引いたものが、新しいバンド名な」

「気合い入れて引けよ、ミヤーヌ」

気合い入れて引くのは良いが、俺のを引くのはやめて欲しい。

自分のセンスに全く自信がない。

とりあえず、思い付いた横文字を書いてみたけど…。

絶対俺のじゃない方が良い。間違いなくルクシーやベーシュさんの方がセンス良いはず。

「じゃあ引くぞ。…はい、これ」

目を閉じてティッシュの空き箱に手を突っ込み、ミヤノはその中から一枚を引っ張り出した。

さて、どんなバンド名になるのか。

「どれどれ?エルの?」

「これエルなのか?」

「何て名前になったんだ?」

「えぇっと…『frontier』?」

「!!!」

俺は愕然として、がっくりと膝をついた。

…な、なんてことだ。

「…あの、ミヤノ」

「何?」

「もう一回…もう一回引いてもらえませんか。ワンチャン別の候補に…」

「あ…?これルトリアの案なのか」

…まさか、俺の候補名が選ばれるだなんて。

五分の一を引いてしまったというのか。

「これ何て読むの?フロンテール?」

「フロンティア、だろ…」

「『frontier』…どういう意味でつけたの?」

「…」

…なんかちょっと格好良いかなぁ、と思って。とは言えない。

「あの…俺達も新たなフロンティアに進もうって意味で…」

「…」

ベーシュさん、真顔で俺の顔を見つめるのやめて。

何言ってんだろうなコイツ、なんて思われてるのかもしれない。

「いや、やめましょうよ!俺の以外にしましょう!きっと皆の方がセンス良いですよ」

「おいおい。俺が引いたのに決めるって言っただろ。『frontier』良いじゃないか」

「そんな!何が良いんですか。ちょっとその箱の中、確認してみてください。俺の候補名より良いのがたくさんありますよ!」

ティッシュ箱を引っくり返すと、選ばれなかった四つの候補名が入っていた。