Music of Frontier

新メンバー、ベアトリーシュさんを迎え。

三日後、俺達は居酒屋に集合して、ベアトリーシュさんの歓迎会を行った。








「それじゃ、新メンバー、ベアトリーシュの加入と、俺達『ダーク・エンジェルズ』の新しい門出を祝して、乾杯!」

「乾杯!」

俺はソフトドリンクだけど、乾杯!

いや、お酒飲めない訳じゃないのだけど、どうにも苦手で。

「いやぁ、しかしこんな美人が入ってくるとはな!やべーだろ。最早ルックスだけで売れるぞ」

「本当。女性が一人入ると、途端に華やかになるな」

今まで男四人で、むさ苦しかったもんね。

出来ればその、華やかなベアトリーシュさんが…もうちょっと愛想が良かったら有り難かったのだが。

贅沢は言うまい。

「うちに入ってくれて、本当にありがとうな、ベアトリーシュ」

「どういたしまして」

「ベアトリーシュ…。ってことはベアトリーヌだな!よろ!」

「…」

何でも「ーヌ」をつければ良いってもんじゃないと思うのだが。

ベアトリーシュさん、黙っちゃったじゃないか。

「…しかし、良い名前だが、確かにちょっと長くて呼びにくいな…。ベアトリーシュ、いきなりで悪いんだが、愛称で呼んでも良いか…?」

「愛称?」

「何かないか?こう呼んでくれ、って愛称」

「…」

ベアトリーシュさんは、少し考えて、

「…じゃあ、ベーシュで」

ベアトリーシュさん、改め…ベーシュさん。

とても呼びやすくて、しかも可愛いじゃないか。

よし、今日からベーシュさんって呼ぼう。

いきなり馴れ馴れしいな、って思われるかもしれないが。

「よし、じゃあベーシュ。宜しくな」

「宜しくお願いしますね、ベーシュさん」

小さい頃のあだ名かな?それとも今考えた?

どちらでも良いけど。

「今日は俺が奢るから、皆好きなもの食べて、好きなもの飲んでくれよ」

「えー!マジ?サンクス、ミヤーヌ。容赦なく食うぜ」

ミヤノ太っ腹。

良いのか。本当に。

「ルトリアも。酒飲めよ。ウーロン茶飲んでないでさ」

「あはは…。ありがとうございます。でも大丈夫なので…」

お酒、まだ苦手なので。

舌がお子様。

「ベーシュもな。好きなもの頼めよ」

「…」

「…?ベーシュ?」

…何故か、無言のベーシュさん。

何だろう。ベーシュさんも…お酒苦手なのかな?

と、思ったが…そんなことはなく。

「…気になってることがあるんだけど、言っても良い?」

「えっ」

…何?

四人共、思わず身構えてしまった。

何を言われるのかと。

もしかしてあれか。ルトリアの顔面がキショイから、やっぱり加入やめます、とか。

そんなことを言われたら、俺は軽く一週間は立ち直れないが…。

しかし、ベーシュさんの質問は、俺の想像とはかけ離れたものだった。

「…『ダーク・エンジェルズ』ってバンド名には、どんな意味があるの?」

…え。

何だ。その質問。

でも、確かにそれ…俺も知らない。

「…そもそも、誰がつけたんですか…?」

ルクシー…じゃないよね?

ミヤノかエルーシア…?

「つけたのはエルだよ」

あっけらかんと答えるエルーシア。

そうだったのか。それは初めて知った。

「どういう意味でつけたの?」

「なんか響きが格好良いかなって。中二病っぽいし。そういう層が興味持ってくれるかと思ったから」

成程。つまり大した意味はないと。

「それがどうかした?」

「…ううん。何て言うか…いまいちダサい気がして」

「…」

「…」

…早くも、『ダーク・エンジェルズ』解散の危機なのでは?