Music of Frontier

ミヤノが懸念した、ベアトリーシュさんの二つ目の問題。

それは、このベアトリーシュさんの、愛想のなさ。

彼女は、未来の仲間(に、なるかもしれない相手)に対し、愛想の欠片もない塩対応だった。

今のところ、返事のほとんどを「そう」で済まされている。

便利な言葉だな。「そう」って。

俺はただ、爽やかに、スマートにベアトリーシュさんを勧誘したかっただけなのに。

最早、スマートとは程遠いスカウトになっている気がする。

「えぇっと…。だ…駄目ですか…?」

確かに、彼女には俺達と仲良くするつもりは皆無…のように見えるが。

でも、このくらいでへこたれてはいられない。

大丈夫。ベアトリーシュさんはちょっと無愛想なだけで、萌え豚な訳でも、痛いアイドルな訳でもない。

ちょっと…無愛想なだけで…。

「あの、駄目なら駄目と言ってくれても良いんですが…」

「…」

…せめて、何か言ってください。

お前みたいなポンコツのいるバンドなんてお断りだよ、と思ってるなら、そう言ってくれても良いから。

あ、でも本当に真顔でそう言われたら、めちゃくちゃ傷つく。

すると、ベアトリーシュさんは。

「…一つ聞いても良い?」

「は、はいっ?何でしょう」

「あなたのバンドって、何人いるの?」

バンドメンバーは何人か、ってことだよね。

「今のところ四人です。ボーカルとベースと、ドラムとキーボード」

だからベアトリーシュさんがもし加入したら、五人になる訳だ。

「男の人だけ?」

「あ…そうですね」

…しまった。そうだよな。ベアトリーシュさんにしてみたら、それは気になるよな。

もし彼女が加入したら、女の子は自分一人だけなのだ。

俺達は気にしないが…ベアトリーシュさんは当然、気にするよな…。

ましてやベアトリーシュさん、この美貌だし。

おまけに、ちょっとナイスバディだし…。

「やっぱり…そこは気になります…?」

「いや、別に…」

…気にしないの?

「それと、その…。ベアトリーシュさんは今、ソロで、フリーで…ギター兼ボーカルをやってると聞きましたが…うちに入ってもらうとなると、その…。ボーカルは俺なので、主にはギター担当になってもらうことになるんですが…」

「…」

「…えっと。嫌…ですか?」

私歌いたかったのに。ギター担当なんて嫌。

そう言われると…俺はまたギター担当に返り咲きするか、

あるいは…雑用係に降格することになるが…。

するとベアトリーシュさんは、素っ気なくこう言った。

「嫌じゃないけど」

「あ…嫌じゃないですか…」

そうですか。それは良かった。

「なら…その、どうでしょう。うちで一緒に…やりません?バンド…」

「…」

その無言は何?

考えてる?もしかして断り文句を考えてる?

「…えっと…。嫌でしたら、そう言ってくだされば…。潔く引き下がりますので…」

嫌がってる人を無理矢理、メンバーに引き入れる訳にはいかない。

しかし。

「…分かった。入る」

「そうですよね。やっぱり嫌ですよね…。大丈夫ですよ、無理には…えっ?」

てっきり断られると思っていた俺は、思わず間抜けな声を出して固まってしまった。

…ベアトリーシュさん、あなた今…何て?

分かった。入る…そう言わなかったか?