Music of Frontier

そこには、美女がいた。

…本当に美女だった。俺の人生史上、トップクラスの美女。

思わず、ぼーっと見とれてしまうほどに。

…俺、今…ふぁっ!って言っちゃった。

こいつ変な奴だ、って絶対思われた。

これでスカウトを断られたら、間違いなく俺のせいである。

「あ、あの。今日はわざわざご足労頂いてありがとうございます。俺、『ダーク・エンジェルズ』の…ルトリア・レイヴァースと言います」

「同じく、アマチュアバンド『ダーク・エンジェルズ』の、ルクシー・エルフリィだ。宜しく」

現れた女性が、あまりに綺麗だったので。

俺は思わず、声が上ずってしまった。

でも、何とか挨拶したぞ。

てっきり、俺は彼女もまた同じように自己紹介してくれるものと思っていた。

それなのに。

「…そう」

…あれ?

そう。ってあなた。それだけ?

「…あの…えっと」

出来ればお名前教えて頂けると嬉しいな…とか。

思ったり…思わなかったり。

彼女はにこりともせず、無表情のまま俺達をじっと見つめていた。

え、何?怒ってる?もしかして、俺達に怒ってる?

ふぁっ!なんて言ったから?

いや…でも、これからスカウトをするなら、出来れば名前くらいは聞きたい。

女性に名前を聞くなんて失礼かと思いながら、俺はおずおずと尋ねた。

「あの…失礼ですけど、お名前は…?」

「…名前?私の?」

「はい…」

俺ごときに名前教えるなんて嫌かもしれないけれども。

あだ名でも良いので教えてください。

「私の名前は、ベアトリーシュ・ファルネフレット」

「あ…。そうですか。ベアトリーシュさんですね」

「そう」

美人は、名前まで美人なんだな。

とても素敵な名前である。

あっ、待て。俺、名前が素敵だからって、気安く呼んじゃったぞ。

そこは名字で呼べよ。

「済みません、あの…。ふぁ、ファルネフレットさん」

「ベアトリーシュで良いけど」

「あ…そうですか。ベアトリーシュさん…」

本人の許可が降りたので、名前で呼ばせて頂くが。

何て言うか、あの…。

「えっと…。ベアトリーシュさん。うちのミヤノから、ある程度は聞いてると思いますけど…。実は俺達、バンドメンバーを募集してて…」

「そう」

「…はい。それで、その…。ベアトリーシュさんは、とてもエレキギターがお上手だと聞いて…」

「そう。ありがとう」

「はい…。あの、ですから…。宜しければ、『ダーク・エンジェルズ』に入って、俺達と一緒にバンド活動をしませんか、と…」

「…」

…あっ。黙ってしまわれた。

これはもしかして…アカン奴なのでは…?