Music of Frontier

速報。

エレキギター担当として入ったはずが、『ポテサラ音頭』でボーカルに転向させられそう。

この俺が。『ダーク・エンジェルズ』のボーカル?

何を血迷ってそんなことになったんだと、自分では思ってしまうのだが。

そもそも、自分で自分の歌が上手いという自覚が全くない。

皆お世辞じゃないの?だって俺、今まで歌なんて全然歌ったことないのに。

これが俺の天賦の才だとでも言うのか?そんなはず…。

でも、皆冗談を言っている訳ではなさそうだし…。

「それとも…ルトリアはボーカルはやりたくないか?気が進まないか?」

「え」

「どうしてもやりたくないって言うなら、無理強いはしないよ。どうしても嫌なら断ってくれ」

ミヤノの目も、真剣そのもの。

…ここは、茶化して良い雰囲気ではないな。

俺も、真面目に答えないと。

「…別に…嫌だって訳ではないですけど…」

「なら、頼めないか?真剣に…。ボーカルをやってくれないか。うちで」

「…」

そこまで言ってくれるのなら…やぶさかではない。

それに、ここでボーカルに転向しておけば、新しい子が来たとき、俺の立つ瀬がなくなるという危機は回避される。

しかし。

「…俺で良いんですか?ギターもそうでしたが…俺、素人ですよ。自分では…そんなに上手いとは思いませんし」

今だって、皆してお世辞を言ってくれてるんじゃないか?と思ってるくらいだし。

そんな俺が、バンドの顔とも言えるボーカルになるなんて。

それは、許されることなのだろうか。

「それでも良いって、皆さんが言ってくれるのなら…頑張ってみます」

三人の期待に、応える為にも。

すると、三人の答えは。

「…馬鹿だな、ルトリア。俺はお前でも良いって言ってるんじゃない。お前じゃなきゃ困るって言ってるんだ」

「そうそう。ルトリーヌなら行けるぜ!今の『ポテサラ音頭』、超上手かったし」

「あぁ。冗談抜きで上手かった。是非、『ダーク・エンジェルズ』のボーカルを引き受けてくれ。お前となら、やっていけそうだ」

…思わず、目頭が熱くなった。

皆、俺を受け入れてくれてる。俺に期待してくれている。

俺にも…まだ出来ることがある。目指すものがある。

それならば。

「…分かりました。では、このルトリア・レイヴァース、只今を持って『ダーク・エンジェルズ』のボーカルに転向させて頂きます。宜しくお願いします」

「おう!よろ!」

「頑張ろうな、ルトリア」

「こちらこそ、宜しくな」

こうして、この日俺はエレキギター担当から一転、ボーカル担当に替わった。

この選択が吉と出るか、それとも…。