Music of Frontier

『ポテサラ音頭』を熱唱させられ、ある種の辱しめを受けた俺は。

何とか…無事に歌い終わったものの。

「…」

「…」

「…」

三人共、真顔のまま固まって動かない。

やめて。笑いたいなら笑って。

ギターも下手くそな癖に、おまけに音痴。

もう『ダーク・エンジェルズ』に、俺の居場所はなさそうだ。

そのときは…仕方がない。雑用係として採用してもらうか、補欠要員になろう。

もうそれしかない。

「あの…。何か言ってくださいよ」

真顔で気を遣われるより、笑い飛ばしてくれた方が精神的には楽なんだけど。

あれ?気のせいかな…泣きそう。

だってしょうがないじゃないか。俺が通ってた学校では、音楽の授業なんてほぼなかったんだから。

楽器を触る機会はおろか、国歌と校歌以外の歌なんて歌った試しがない。

…ん?今思えば…俺の歌唱力を知りたいのなら、わざわざ恥ずかしい思いして『ポテサラ音頭』なんて歌わなくても。

我らの誉れ高きルティス帝国国歌を歌えば良かったのでは…?

何だそれ。俺、恥のかき損…、

「…やべぇ。ルトリーヌが普通にうめぇから、反応に困る」

「あぁ…。こんな逸材がうちにいたとは…。始めからギターじゃなくて、ボーカルとして入ってもらえば良かった」

「ルトリア…。お前、そんなに歌上手かったんだな…」

真顔のルクシーが、ぽん、と俺の肩に手を置いた。

…………………はい?

「…何言ってるんですか、皆さん…」

「何って、何がだよ。お前そんなに歌上手いんだったら始めから言えよ!」

「もっと早くにオーディションしておくべきだったな」

「まぁ良いじゃないか。これでボーカル確保だ。ルトリア、お前今日からギターやめて、ボーカルに転向だ」

「…??」

ちょっと…あの。

…へ?

皆さん、何言ってるの?本当に。

あっ、分かった。

「お世辞をありがとうございます、三人共。でもお世辞言われちゃ、むしろ悲しくなるので…。そろそろ笑ってくれて良いですよ」

「は?何言ってんのルトリーヌ。アホなこと言ってねぇで、今すぐカラオケ行って練習してこい」

俺に恥の上塗りをしろと?

「ちょっと待ってくださいよ。皆さん。何で俺がボーカルを?」

その…これからスカウト予定の女の子に、ボーカルやってもらうんじゃなかったのか。

何で俺?

もしかして皆、徹夜明けなの?冷静な判断が出来てないの?

「何でって、今お前、めちゃくちゃ上手かっただろうが。『ポテサラ音頭』」

「はいぃぃ?何処が上手かったんですか?年甲斐もなくポテポテ歌ってただけじゃないですか!」

「…お前今、『ポテサラーズ』を侮辱したな?怒られるぞ世間に」

あっ、世間の皆さんごめんなさい。

『ポテサラーズ』を馬鹿にしたつもりは全く。

「そ、それはともかくとして、俺は別に上手くなんてありませんよ!」

「いや上手かったよ。カラオケ行って採点してみなよ。多分90点台後半出るよ」

えぇぇぇ…?皆、一体何を根拠に。

どうやら三人共、からかっているつもりでも、俺を気遣ってお世辞を言ってくれてる訳でもなさそうだ。

本当に?俺がボーカル?

「…さては皆さん、自棄になってますね?この際ボーカルを確保出来るのなら、多少音痴でも何でも良いと…」

「何でそんなにマイナス思考なんだよ…。自棄になんてなってないよ。なぁ?」

「うん。普通にめちゃくちゃ上手かった。エルの10倍は上手かったよ」

「あぁ。ルトリア、お前本当に才能あるぞ。嘘じゃなくて、本当に」

そう言って俺を真っ直ぐに見るルクシーの目は、真剣そのものだった。

…この目を見る限り、本当に嘘ではなさそうだ。