Music of Frontier

…新しい女の子に、エレキギターを担当してもらって。

代わりに、エレキギター担当をクビになった俺が、ボーカル担当になる?

「要はアレでしょ?うちらの問題は、メンバーが足りてないってことであって。メンバーさえ足りたら、あとは仲間内で上手いこと調整すれば良くね?」

「いや…つっても、そんな簡単には替えられないだろ。ルトリアだって今までギターの練習してきたんだし…」

練習って言っても…それほど上手くなってはいないが。

「それに…。誰でも出来るって訳じゃない。ボーカルにも適性が必要だし…」

「適性?ルトリーヌ、適性ねぇの?」

ねぇの?って。

ねぇのかあるのかって聞かれたら…そりゃ、ねぇと思うけど。

「ルトリーヌって、カラオケ何点取れる人?」

「え…。カラオケ…行ったことない人です」

「マジかよ。バンド志望ならカラオケくらい行けよ」

ごめんなさい。

この間まで入院してた身なので、許してください。

「でも…。考えようによっては、アリかもしれないな」

ミヤノは、顎に手を当ててそう言った。

皆深刻なボーカル不足のせいで、考え方が自棄になってきているのかもしれない。

おまけに、ルクシーまでもか。

「確かにな。よし、ルトリア。とりあえず、歌ってみてくれないか。ボーカル転向試験だ」

「えぇぇ!そんな…!」

「お前がボーカルに転向したら、その子をギター担当としてスカウトする。すると俺達は晴れてバンドメンバーが揃う訳だ。念願のバンド活動が出来るぞ」

「そ、それはそうですけど…。でも俺には無理ですよ!」

カラオケすら行ったことがないのに、ボーカルなんて。

無謀にも程があるじゃないか。

「そんなの、やってみなきゃ分からんだろ。とりあえず物は試しだ。歌ってみろ」

「そうそう。もしルトリアが破壊的音痴だったとしたら、また次の策を考えよう」

人間、追い詰められると形振り構わなくなるんだなぁって。

俺をボーカルに据えてまで、メンバーの頭数を揃えたいか。そうなのか。

そんな軽いノリでボーカルなんて、なれるはずがない。

それなのに、エルーシアは。

「ルトリーヌ、とりま『ポテサラ音頭』のカラオケ音源流すから、ちょっと歌ってみて」

「え、ちょ、そんないきなり」

「『ポテサラ音頭』知ってるよな?ルトリーヌ。いくらカラオケ行ったことにないにしても」

「それは…まぁ、知ってますけど…」

『ポテサラ音頭』と言えば、ルティス帝国の国民的人気ボーカルユニット、『ポテサラーズ』の代表曲である。

バンドをやっている身として、俺も一応知っているけど…。

「よし、じゃあ流すぞ」

「え、えぁ、ちょ」

歌えと。皆の前で俺に歌えと。

しかし、皆至って真剣にやっているので。

ここで俺が恥ずかしがって歌わなかったら、場が白ける。

覚悟を決めて、俺は人生初、『ポテサラ音頭』を熱唱した。

「じゃがいもほくほく蒸しまして~♪にんじん玉ねぎ混ぜたなら~♪みんな大好きポテサラで~♪今日もえ~が~お♪あぁポテポテポテポテ♪ポテサラ~音頭~♪はい♪」

歌いながら。

こんな歌詞でなかったら、もう少し羞恥心も減るんだけどなぁ、と思った。