Music of Frontier

俺達と同年代の女の子で。

歌もそこそこ上手くて、おまけに美人。

良いじゃないか。

「分かった。じゃあ歌う曲が萌え豚のときみたいに、偏った曲ばっかなんだろ。演歌オンリーとか」

それは確かにキツいかも。

ギターとドラムを背後に、こぶしの利いた演歌を歌われると、俺としては大変困る。

いや、むしろアリか?

新しいかもしれない。バンド系演歌歌手。

なんて冗談を言っている場合ではなく。

「そんなことはない。歌ってるのを聴いたけど、選曲は俺達とあんまり変わらなかった」

「じゃあ良いじゃん!何でその子呼ばねぇの?」

本当。

その子良いじゃないか。同年代で女の子で歌が上手くて、選曲も俺達と変わらない。

大変宜しい物件だ。

「本当に。何で呼ばないんですか?他のバンドと掛け持ちしてる…って訳でもないんですよね?」

「あぁ。完全にフリーの子なんだけど…」

なら、呼べば良いのに。

そこまで良い条件が揃ってるのなら、少々のことは我慢しよう。

例えば…凄く我が儘、とか。

まぁ我が儘にも限度はあるが。

「ミヤノ。冗談抜きでその子、スカウト出来ないのか?この際ボーカルを入れる為なら、ある程度のことは我慢するつもりだが」

ルクシーも真剣にそう言った。

だよね。その条件なら、ボーカルなしよりずっとまし。

よそのバンドに引き抜かれてしまう前に、スカウトしたいところだ。

「あぁ…。俺も考えたんだけどな。でも…その子を入れるには、問題が二つある」

「二つ…?一つ目は?」

「…その子な、歌…そこそこ上手いんだけど、それ以上にな…」

ミヤノは、申し訳なさそうな顔で俺を見た。

「…エレキギターが、物凄く上手いんだ」

「…」

…そうなの?

これには、ルクシーもエルーシアも言葉がなかった。

「だからその…。彼女を入れてしまうと…ルトリアがな…。…その、ルトリアのポジションと被ると言うか…」

「…良いんですよ、ミヤノ…。はっきり言って良いんですよ。その子を入れちゃうとギター上手過ぎて、俺の存在意義が全くなくなるんですよね」

「いや、全くってほどではないけど…。でも…その、出番は少なくなる…かもな」

オブラートに包んで言ってくれてありがとう。

ミヤノが半年前にその子をすぐスカウトしなかったのは、それが理由だな。

その子を入れちゃうと、俺の立つ瀬がなくなるから。

そりゃもう、しょうがないよなぁ…。俺が素人なのは誰の目から見ても明らかだし。

「成程…。それは確かに…。入れない方が良いかもな。ギター兼ボーカルってことになると…うちではちょっと」

ルクシーも、申し訳なさそうに目を逸らしながら言った。

良いのよ。ただでさえ希薄なルトリアの存在意義が皆無になるから駄目だな。ってはっきり言って良いのよ。

すると。

きょとんとした顔で、エルーシアがこう言った。

「何で?良いじゃん、その子入れれば」

え。

「エル…。お前鬼だな。ルトリアに対する気遣いはないのか」

「良いんですよ、はっきり言ってくれれば…。俺が下手くそなのは事実なので…」

バンドの世界は弱肉強食。下手くそな者は淘汰されていくさだめなのだ。

しかし、エルーシアは首を傾げて、

「へ?いや、その子ギター上手いんだろ?ルトリーヌより。ならその子を入れて、その子にギターやってもらって、ルトリーヌが歌えば良いじゃん」

「…!?」

これには、一同が驚愕であった。