Music of Frontier

それはさておき、俺達『ダーク・エンジェルズ』にボーカルがいない事実に変わりはない。

これを何とかしないことには、俺達は一生まともにバンドが出来ない訳で。

「何か良い方法はないものでしょうか…」

「そうだな…。今ではルトリアも入ったからな。そろそろ真剣に考えた方が良いな…」

「真剣にっつってもさぁ…。募集サイトにはもう二年も前から載せてんじゃん」

このままじゃ、次の応募者が来るまで何ヵ月かかることやら。

もしかしたら、何年単位で希望者が現れない可能性もある。

それは困るなぁ…。

「いっそさぁ…。カラオケ屋の前に張り込んで、歌上手そうな人に片っ端から声かけてスカウトする?100人くらい声かけたら、一人くらい引っ掛かるんじゃね…?」

「キャッチセールスかよ…」

もうそれでも良いような気がしてきた。

ってか、そうでもしないと集まらない。

「不審者扱いで通報されて終わりだよ、馬鹿。もっとまともな方法を考えろ」

「まともなって…。他にどうするんだよ。ルクシーヌ、歌が上手い知り合いとかいないの?」

「…いないな」

俺にもいないわ。ごめん。

「ミヤーヌは?ミヤーヌ、親戚がライブハウス経営してるんだって言ってたじゃん。歌上手くて、何処のグループにも所属してないフリーの知り合い、いねぇの?」

「…うーん…。…実は、いないこともないんだが」

え?

俺もルクシーもエルーシアも、驚いてミヤノを見つめた。

「いるの!?」

「…あぁ。思い当たる人が…一人」

「言えよ!二年前に言えよ!何で今まで黙ってたんだよお馬鹿っ!」

お怒りのエルーシア。

本当。思い当たる人がいるのなら、もっと早くにそう言ってくれよ。

「二年前…って。その人の存在を知ったのは、半年くらい前なんだよ。うちで経営してるライブハウスに来てる人が話してるのを聞いてな」

「ミヤノは会ったことあるんですか?その人に」

「うーん…。まぁ…」

…何?そのはっきりしない返事は。

つまり…その表情の意味するところは。

「分かった。あれだろ、すげーブスなんだろ?」

「それとも、また萌え豚か?」

すげーブスはまだしも、萌え豚はちょっと遠慮したい。

偏見かもしれないけど、嫌だ。

「いや…。ブスではない。むしろ、物凄く美人だ」

「美人か。女の子?」

「あぁ。女性だ」

女性か。しかも物凄く美人の。

ということは萌え豚って訳ではないか。

「なら、歳は?中年か」

中年はさすがに。

ジェネレーションギャップが凄過ぎて、仲良くなれる気がしない。

「いや、若い。ルトリアより…一つか二つ年上くらいだ」

あら。じゃあ同年代。

同年代で、美人の女の子。

一見良い条件だが、それでもミヤノが難色を示すということは…。

「…ボーカル志望なのに、破壊的な音痴…とか?」

「いや、そんなことはない。実は彼女が路上ライブしてるのを聴きに行ったことがあるんだが、歌はそれなりに…そこそこ上手かった」

マジで?

それってもしかして、かなり良い物件なのでは?