Music of Frontier

「ルトリア、だいぶギター上手くなってきたな」

「ありがとうございます」

日々の練習の成果もあり。

俺のエレキギターの腕前は、最低限、人に聞かせられるくらいは上手く…。

いや、自惚れるな。まだそこまで上手くない。

素人に毛が三本生えたくらいは、上手くなった。

まぁ精々この程度である。

「ルトリアが入って、ようやく俺達も少しバンドらしくなってきたよな」

「確かに」

俺が入るまで三人だったんだもんな。それが今や四人になり。

エレキギターも加わって、ちょっとバンドっぽくなってきたのは、喜ばしいこと。

しかし、エルーシアは。

「バンドらしくなんてなってねぇよ。エルに言わせりゃ、まだまだ全然バンドじゃねぇ」

エルーシア、あなたなんてことを。

「そうですね…。俺のギター、まだまだ下手くそですもんね。いてもいなくても大して変わらないくらいに…」

ちょっと上手くなったんじゃね?と自惚れていたぶん、ショックは大きい。

しかし。

「ちげーよ。ルトリーヌが上手い下手じゃなくて、頭数の問題じゃ」

「…」

「…」

「…それを言うなよ…」

俺も、ルクシーも、ミヤノも、敢えて口にしなかったのにさ。

そう。俺達がいまいちバンドっぽくないのは、俺のエレキギターが下手くそだからというのもあるけど、それ以上に。

…頭数が、足りてない。

もっと具体的に言うと、俺達には決定的に欠けているものがある。

「ボーカルだよ、ボーカル!ボーカルもいないのに、バンド名乗る資格ねぇだろ」

「…そうなんですよねー…」

そう、ボーカル。

実は『ダーク・エンジェルズ』には、まだボーカルが不在なのである。

…よく考えたら…ってか、よく考えなくても。

ボーカルのいないバンドって、それただの合奏じゃん。

歌えよ。誰か。

「何で俺達には…ボーカルがいないんでしょうね…?」

ボーカル。ボーカルは何処にいる。

「何でって言われても…。俺が加入したときからボーカルいなかったからな…」

と、ルクシー。

ちょっと待って。ルクシー、あなた二年前から『ダーク・エンジェルズ』にいたんだよね?

そのときからボーカルいなかったの?ボーカルのいないバンドに入ったの?何故?

「よく二年もボーカルなしで生きてきましたね」

「…それはしょうがない。募集はずっとしてるのに、誰も来ないんだよ」

それは失礼。

そうか…。皆楽器はやりたいけど、歌うのは嫌か。

シャイなのかな。

「メンバー募集サイトに登録してから二年たつが、希望者は一向に現れない」

悲しい現実である。

バンドやりたい人、少なくなってるのかな?

それともボーカルをやりたい人が少ないのか。

「待てよ。今まで二人くらい希望者は来たじゃん。採用しなかっただけで」

え?来たの?

「何で採用しなかったんですか。選り好みしてる状況じゃないでしょうに」

多少難があっても、ボーカルなしよりは。

するとミヤノは、そのときのことを思い出したのか、溜め息混じりに頭を振った。

「違うんだよ、ルトリア…。俺だって選り好みするつもりはなかったさ。でもどうしても…駄目だったんだ」

「駄目…?」

一体、何が駄目だったと言うんだ?