Music of Frontier

「それじゃまー、ルトリーヌの退院を祝して…乾杯!」

「乾杯!」

病院を出てから、俺とルクシーは近くにあるファミレスに向かった。

そこで、ミヤノとエルーシアの二人と合流し。

退院を祝して祝賀会を開いていた。

「ほらほら、飲め飲め。ソフトドリンクだけど」

「さすがに、退院してすぐ居酒屋で酒盛り…って訳にはいかないからな…」

「あはは…そもそも俺、お酒飲んだことないので…」

病院で成人しちゃったので、まだお酒は飲んだことがないのだ。

まぁ、ソフトドリンクで充分。

「いやぁめでたいねぇ。これでルトリーヌを合わせて、四人で『ダーク・エンジェルズ』をやれる訳だな」

「そうだな」

…ちょっと、気恥ずかしいなぁ。

喜ばしいことなんだけど。

「すぐにでも皆で練習を…と言いたいところだが、まずはルトリアが新しい生活に慣れるのが先だな」

「ん…?そういやルトリーヌ、これから何処に住むの?実家?」

いや…実家は、俺にはもうない。

18歳になって成人してしまったから、これまで籍を置いていた児童養護施設にも帰れない。

退院後の引き取り先として、俺に残された選択肢は一つ。

「しばらくは、ルクシーのところに居候させてもらうつもりです」

「へぇ…そうなのか」

ルクシーとも、ルクシーのお母さんとも、話はついている。

最初にこの話を持ちかけてきたのはルクシーなのだ。「退院したら、うちに来い」と。

申し訳ないから断ったのだが、「俺が見てないと、お前は平気で飯を抜いたり、薬を飲み忘れるだろ」と怒られ。

結局、ルクシー宅に身を寄せることになった。

本当は…ちっさいアパートでも借りて、一人で住もうかと思っていたのだが…。

アパート借りるって、お前貴族クビになった癖に、金あるの?と聞かれそうだが。

実は、俺は金に困ってないのである。

確かに貴族ではなくなったが、第二帝国騎士官学校をクビになるとき、慰謝料兼口止め料として、一生暮らせるほどもらってるから。

汚い金ではあるが、金は金だ。精々有効利用させてもらう。

「なぁんだ、行くとこないなら、うちに来れば良いと思ってたのに」

と、エルーシア。

あら、嬉しい申し出だ。

しかし、ミヤノは。

「やめとけ。来るならエルじゃなくてうちに来るべきだ。エルの部屋は、足の踏み場もないほど散らかってるからな」

「あ…そうなんですか。じゃあもし家出するときは…ミヤノの家に行きますね」

「あぁ、そうしろ」

「おい待て。そもそも家出をするなよ」

ごめんごめん。冗談だよルクシー。

でも、こんな冗談を…言えるようになったんだよな。俺は。

我ながら、凄い進歩だと思う。

「じゃ、ルトリーヌが落ち着いたら、また皆で集まって、本格的に練習始めようぜ」

「そうだな。楽しみだ」

「えぇ、俺も楽しみです」

楽しみに思うことが出来た。

これもまた、大きな進歩である。