Music of Frontier

それからの日々は、まるで早送りでもしているかのように、あっという間に過ぎていった。

ギターは…相変わらず素人に毛が生えた程度だったけど、それでも少しずつ上手くなっていたし。

一番進歩が見られたのは歩行訓練で、杖をつきながらではあるものの歩けるようになったし、僅かな距離であれば杖なしでも歩けた。

これには、エインリー先生もびっくりだった。

心の傷の方も…完全に癒えた訳ではないし、今でも昔のことを思い出せば、キリキリと胸が痛んだ。

時折、どうしようもないほどの虚無感に襲われて、息苦しくなることもあった。

それでも、以前のように腑抜けになることはなかった。

今の俺には、目指すものがあるから。

退院して、ルクシーやミヤノやエルーシアと一緒に、バンドをやりたい。

と言うか、俺は思い出したくない過去を、何か別のもので紛らせたかったのである。

俺は決して、過去を乗り越えたのではない。

ただ、目に入らないように固く蓋をして、鍵をかけてしまっただけだ。

エインリー先生は、それで良い、と言った。

必ずしも、辛い過去と向き合って、克服しようとしなくて良い。

無理に向き合おうとして、その重さに潰れてしまうよりは。

目を逸らすことで前を向けるのなら、その方が良い。

傷は、やがて時間が癒してくれることもあるだろうから、と。

だから、俺は目を逸らすことにした。

目を逸らして、前に進むことにしたのだ。





そして。