Music of Frontier

「ルトリア、この二人が俺のバンド仲間。こっちのちっさい方がエルーシア・イーシュエン。こっちの大きい方がミヤノ・リンデルトだ」

ルクシーが、二人を紹介してくれた。

エルーシアと、ミヤノね。

「ども、ちっさい方のエルだよ。よろ」

「大きい方のミヤノだ。ルクシーから話は聞いてたけど、会うのは初めてだな。宜しく」

「…どうも…」

折角二人が挨拶してくれているのに、俺は小さい声でそう答えただけだった。

二年の歳月は、俺を酷い人見知りにしてしまったらしい。

「ね、名前何て言うの?」

エルーシアが俺に尋ねた。

…割とぐいぐい来るタイプだな。

「えっと…。ルトリアです。ルトリア…。ルトリア・レイヴァース」

マグノリアの名を名乗ることを許されない俺の、新しい名字だった。

俺を引き取った孤児院が、勝手に決めたものである。

マグノリアじゃなければ何でも良い。

「ルトリア…。ルトリアか。じゃ今日からルトリーヌって呼ぶわ。エルのことは親しみを込めて、エルと呼んでくれて良いぞ」

「え…。え、る、ルトリーヌ…?エル…?」

ど、何処から出てきたの…?その、「ーヌ」の部分は。

「済まん、エルはいつもこうなんだ。別に新人いじめじゃないから安心してくれ」

と、フォローを入れるミヤノ。

「そうそう。エルは、仲間はあだ名で呼ぶ派だから。仲良しっぽくて良いじゃん?ルトリーヌ、『ダーク・エンジェルズ』に入るんでしょ?」

「『ダーク・エンジェルズ』…?」

っていうのは、もしかして…。

「俺達のバンドの名前だ。お前も加入希望だって聞いたが…」

あ…やっぱり、バンド名なんだ。

実にその…中二病っぽくて何とも言えない名前だが。

バンド名って、一般的にこんなものなのだろうか。

「はい…。その、素人ですけど…入れてもらえるのなら…」

「大丈夫。初心者でも全然OKだから」

「そうそう、初心者でもOKしないとメンバー集まんないもんな~」

ミヤノとエルーシアがそれぞれ言った。

良かった。メンヘラ初心者なんて要らねぇ、と言われなかった。

二人共、純粋にメンバーが増えることを喜んでるように見える。

「それに、ギター練習してるんだろ?ルクシーヌに習って」

「あ…はい。一応…。まだまだ下手くそですけど…」

俺のギターの腕前なんてまだ、素人に薄い産毛が一本生えたくらいしかない。

そう簡単には上手くならない。悲しいけれど。

「そうか。まぁ、少しずつ上手くなってくれれば良いよ」

「…ありがとうございます。でも、その…」

「うん?」

楽器が下手くそというのもあるし、もう一つ。