Music of Frontier

「…上手く出来ないかもしれませんけど…。あなたと一緒に、バンド、やってみます。本当に素人なんで…。色々教えてください」

「…ルトリア…」

「それと…。リハビリもします。杖をつきながらでも…歩けるようになります。時間かかると思いますけど…」

「…」

「…ルクシー?」

何で、無言?

まさか本当にOKするとは思わなかった、やっぱ今のナシね、とか言われたらショックなのだが。

すると、ルクシーは。

「良かった…!良かった、ルトリア…」

「えっ、ちょ…。そんな、泣かないでくださいよ」

「うるさい。お前は、俺がどんなに心配したか知らないんだ」

あ、ご、ごめん。

「ルトリア…。頑張ろうな、一緒に。今度は、辛いことも、嬉しいことも、全部分け合おう」

「はい…。ありがとう、ルクシー。俺も頑張ります」

もう一人ぼっちじゃないと分かったから。

新しい人生を、今度はルクシーと一緒に…、

と、そのとき。

病室の入り口から、ぐすっ、と鼻を啜る音がした。

…ん?

俺もルクシーも、同時にそちらを向いた。

「…何やってるんですか?エインリー先生」

「えっ、えあっ、ごめ…。ぐすっ。ぬす、盗み聞きしてた訳じゃないんだよ。回診に来たら、偶然聞いて…。ぐすっ」

「…それは良いですけど。何で泣いてるんですか」

「だって…。良い話だなぁって…」

「…」

ハンカチで目頭を抑えながら、鼻を啜るエインリー先生。

…なんだか、興が削がれてしまったのだが。

「良かったねぇ、二人共…。本当に良かった…。我が事のように嬉しいよ…」

「…そうですか…」

エインリー先生は、回診の間中、鼻を啜りながら大号泣であった。

こんなに泣いてもらって、嬉しいのだけど、気恥ずかしかった。