Music of Frontier

翌日。

俺は早速、ルトリアのもとを訪ねた。

まずは、エインリー先生に相談だ。

ルトリアをバンドに誘おうかと思うんです、と言うと。

「へぇ。良いねぇ」

…それはさすがに…と言われるかもしれない、と身構えていたこともあって。

意外にエインリー先生の反応が良かったことに、俺の方が拍子抜けしてしまった。

「うん、良いと思うよ。青春っぽくて」

「せ、青春って…」

そんな理由で?

「いやいや、本当に良いことだと思うよ。鬱屈した気持ちを芸術の方面に昇華させる。そう簡単に出来ることじゃないけど、もし出来たら…ルトリア君にとっては必ずプラスになる」

「じゃあ…誘ってみても良いですか?」

「勿論。断るかもしれないけど…聞くだけ聞いてみたら良いよ」

「分かりました」

こうしてエインリー先生の了解も取り付け。

その後、俺はルトリアの病室に向かった。

そして、相変わらず暗い顔でぼんやりしているルトリアに、俺はその話を持ちかけた。

「なぁ…ルトリア」

「…何ですか?」

…まずは、何から言うべきだろうか。

「実は俺、今な…バンドやってるんだよ。バンド知ってる?」

「バンド…」

「前、聴かせてあげたことあるじゃん、俺が好きなアーティストのCD。あんなことやってるんだ」

「…」

…ルトリアは無言であった。

興味があるのか、ないのか…。そんなことやってたのかお前、って思ってそうだが…。

ルトリアがしんどい思いして入院してる手前、楽しい話は何となくしづらくて、今まで黙っていたのだ。

「でもさ、実は…人数がまだ少なくて、まともにバンド出来てないんだよ」

「…そうなんですか」

「それで…なんだけど」

さて、ここからが本題だ。

俺は生唾を飲み込んで、用意していた言葉を口にした。

「ルトリア、お前…一緒にバンドやらないか?」

「…」

ルトリアは、驚いたような顔をして固まった。